2023年2月10日金曜日

トータルエナジーズ2年連続過去最高利益更新から見える勝者がますます富む図式

   


 昨年末にロシア大手ガスプロムからのガス供給が停止した直後から始まったフランスのガソリン供給会社トータルエナジーズの全国規模でのストライキは国民を大混乱に陥れました。

 当初は、ガソリンスタンドからガソリンがなくなりはじめたことで、もはやフランスにガソリンがなくなってしまうのだろうか?とパニックをおこしかけた人も少なくありませんでした。

 しかし、同社広報はすぐに、「在庫は十分にあるので、フランスでガソリンが不足しているわけではありません」と発表し、その後、このガス欠状態は、同社組合によるストライキが原因であるということがわかってきました。

 日常生活に車が必要な人々にとっては死活問題で、ガソリンが入荷されたガソリンスタンドには、長蛇の列ができ、給油するために、長時間並ぶ、あるいは、ガソリンのあるガソリンスタンド検索アプリなどまで登場し、我が家の近所にもこのための大渋滞ができているのを目撃したりもしていました。

 ガソリン価格が高騰し始めた時点で、同社は1リットルあたり20セントの値下げを導入したため、(政府が導入している1リットルあたりの値下げを併せると1リットルあたり50セントの恩恵を受けることができる)消費者が30%増加したと言われていました。

 そのうえ、ガソリンがないとなると、値段があがろうが、とにかくガソリンがある時には、先を争ってでも入れておこうとするのは追い詰められた人にとっては、当然のなりゆきで、弱い人々をさらに痛めつけるようなシナリオが遂行されてしまったのです。

 同社の組合のストライキは前年の収益増加に見合う昇給がなされていないというのが、理由の一つではあったものの、そもそもこの会社の給与は十分に平均水準を超えた富裕層で、たしかにこの利益の平等な分配に対して、不満があったとしても、実際に被害を被る一般市民には、到底理解できない別世界の次元での話です。

 しかし、この騒動も会社側の一定の歩み寄りによって、年末にはおさまり、ストライキも終わったのですが、今回、年間決算の発表があり、過去最高を記録した前年の利益160億ユーロ(2021年)をさらに上回り、今年は190億ユーロ(2022年)に達し、再び過去最高益を記録したことにより、同グループの利益配分をめぐる議論が再燃しています。

 現在の状況では燃料費の高騰は抑えようもないことは事実ではありながら、あまりの高騰に、政府からの補助金が出たりして、価格高騰にもかかわらず、生活必需品でもあることから、消費がさほど落ちることはなく、1リットルあたり20セントの値下げとこの会社の収益から考えたら、カスのような割引のために一般市民が集まり収益をさらに上げるという「危機感を煽りつつ、善人顔で割引をしてさらに儲ける」という仕組み。

 ビジネスとすれば、巧妙なやり方ではあるものの、これに踊らされて、挙句の果てにガソリンを求めて疲弊した上に、安い給料で高い燃料費を払わされている一般市民にしてみれば、怒り心頭なのもわかります。

 左翼系野党や環境保護団体は、この危機に乗じて気候や従業員を犠牲にして利益を上げていると非難しており、「私たちは働き、税金を納め、それで生活に困っている。一方、そこから逃れ、共謀して利益を得ている大物たちが上にいる」と「国家を食い物にする行為」を糾弾しています。

 政府の援助などが介入する事態になると、それを食い物にする行為と、共謀して利益を得ている大物が背景にいる・・などと言う話は、どこかの国でもよく聞く話でもあります。

 この決算発表の直後に、トータルエナジーズは、貧因層に対して100ユーロのガスチケットを提供することを発表していますが、その実、利益の大半は株主への配当に回されているようで、2022年のトタルエナジーの26億株の報酬は1株当たり2.81ユーロで、1株当たり1ユーロの例外的ボーナスがすでに支払われ、つまりほぼ100億ユーロの報酬が支払われる予定です。

 しかし、一部の経済学者によれば、トータルエナジーズがこの金額を減らせば、株主は株式を売却し、株価は低迷し、アメリカやイギリスに低価格で買収される危険性があるとも言われています。

 一方、労働組合員や政治家は、特に超利益に対する例外的な税の導入を通じて、従業員と国家のためにさらなる要求を出しています。

 どちらにしても、どのようなカタチにせよ、この機に乗じて増収増益を遂げている人々がいることには違いなく、このような企業に追加に課税して、将来の新しいエネルギー開発などに使われる資金の一部でも調達されれば、少しは飲み込むこともできるものの、税金の問題は、国が決定することです。

 しかし、そもそも、ここまで収益があがっているなら、そんなに値上げが必要だったのか?と堂々巡りの議論となり、裏にはどうにも生臭いものがあるような気がしてしまいます。

 同社はすでに昨年の増収の見返りとして、社員には、昇給とボーナスを支払っており、そのうえ、同社の従業員の65%が株主であるという驚きの数字からも彼らは配当としてもかなりの収益を得ているのです。

 こうなると、もはやインフレに喘ぐ一般市民とは別次元の話で、この「富むものたちがますます富む図式」は変わらないのです。

 

トータルエナジーズ2年連続過去最高利益更新


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2023年2月9日木曜日

パリ北駅に潜む「人命に対する大きなリスク」

 


 2月2日に行政裁判所に提出された報告書によると、パリ北駅は、「構造上の問題の巣窟」であり、「人命に対する大きなリスク」があることが指摘されています。

 パリ北駅はヨーロッパ最大の駅だそうで、大きな駅だからこそ、危険があれば、リスクも大きく、見逃せない問題です。

 「パリ北駅が危ない!」とかいうので、私はまたてっきり治安上の問題かと思っていましたが、駅の構造上の問題なのだそうです。

 この報告書は、駅の建設に関する数々の問題について警告しているもので、現在のパリ北駅に特に倒壊と火災の観点から3つの大きな危険があることを指摘しており、乗客とSNCF(フランス国鉄)職員の安全を脅かすものです。

 1つ目は、「チェーン崩壊の危険性」で、もし列車が駅に入るときに転倒した場合、33番線と34番線の間のコンクリートの支柱はレールに近すぎて事故に耐えることができないと指摘しており、これはすでに弱っている構造に加え、拡張が考慮されていないという重大な建設上の欠陥があると言っているのです。

 具体的には、列車事故のリスクは駅全体が一般市民の上に崩れ落ちることに繋がると指摘しているもので、これが連鎖反応を起こし、バス停留所からRER中2階も崩壊させることになるとのことで、ピーク時のパリ北駅の交通量は3万人を超えるため、大惨事に繋がりかねないというのです。

 すでに、このような事故は実際に他の場所でも発生していることで、昨年11月にカルカッソンヌ駅で貨物列車が脱線し、400メートルもの線路がすっ飛ばされて大惨事となっています。

 また、駅敷地内のSNCFの建築物に倒壊の危険性があることも指摘しています。これはこの建築物の壁面で、重さ3~4トンのプレハブコンクリート部材が、留め具の広範囲な腐食のため建物から外れてしまっており、いつ落下してもおかしくない状態であるとのこと。

 この指摘箇所は駅の2番線、ユーロスター専用線路にも近く、実際に事故が起これば被害は計り知れません。

 2021年夏に鉄道グループは暫定的な安全対策を行ったものの、それはあくまで暫定的なものにとどまり、追加的かつ決定的な工事は行われていません。

 この報告書を作成した専門家はこれらのリスクに加えて、地表の地盤が突然崩壊する危険性も指摘しています。

 2017年の段階で線路に35ミリ~60ミリの沈下が確認されており、常に電車の振動にさらされている場所の地盤は常にこれを悪化させる要因を抱えており、地盤が突然崩壊する危険性があることを指摘しています。

 最後にこの報告書が指摘している3つ目の大きな脅威は火災のリスクで、2階部分の床が「人の安全に必要な防火安定性・防火度」を有していないものがあるというものです。

 これもまた、悪化した状況がさらに状況を悪化させているという悪循環で、火災が起こった場合に、すぐ下のSNCF事務所に床が落ち、その床が1階にある駅の売店に倒れ込むというものです。

 もともとこの報告書はパリ北駅の近代化を引き受ける役割を担っていたStatioNord社から受けた専門家が作成したもので、この北駅近代化のプロジェクトは2021年にSNCFが放棄して以来、宙に浮いたものが報告書が提出されたことで、現在、両社の間で再び紛争の火種となっています。

 SNCF(フランス国鉄)はこの報告書に対し、「不正確で偏ったレポートであり、悪意がある報告である」と意義を唱え、「法廷の場で真実を再確立することを保証する」と弁明しており、「お客様とスタッフの安全を完璧に確保するために必要な措置は当然とっている」としています。

 現在、パリオリンピックに向けてなのか、どうにも工事が多く、メトロの駅なども夜間閉鎖、あるいは、週末閉鎖などが多く、別にそんなに手を加えなくてもいいのに・・とも思うのですが、こんなに危険がある場所ならば、そちらを優先した方がよいのでは・・と思ってしまいます。

 ましてや、オリンピックのためならば、オリンピックのメインスタジアムは、パリ北部、ここで、何か事故が起これば、世界中に失態を晒すことになりかねないのでは・・と疑心暗鬼になってしまいます。

 私はあまり北駅を利用することはないのですが、パリ北駅はユーロスターの発着駅でもあり、ロンドンに行ったりする場合はここからです。しかし、ユーロスターに乗って、ロンドンに行って帰ってくると、近代的できれいなロンドンのユーロスターの駅とパリ北駅に戻ってきたときのギャップがあまりに激しく、誇り高いフランス人が恥ずかしくないのだろうか・・と思っていました。

 さすがに倒壊の危険まであるなどとは思ってもみませんでしたが、逆にあちこちをいじっているのに、なぜ、そんな状態の駅を放置し続けるのかは疑問です。


パリ北駅 崩壊の危険性


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2023年2月8日水曜日

インフレにつれてスーパーマーケットでの万引きが急増

   


 セルフレジがフランスで広がり始めたときに、正直、私は「フランスでこれをやって大丈夫なんだろうか?」と思いました。

 今、パリのスーパーマーケットでは、セルフレジとお店の人が対応してくれるレジが混在している状態で、あまりに買い物の量が多い場合はセルフレジでは無理なのですが、そうでない場合は、セルフレジの方が待ち時間が少なくて済むので、私はもっぱらセルフレジを利用しています。

 待ち時間が少ないということは、そもそもの買い物が比較的少ない人が利用することもあり、また、まだまだセルフレジに慣れなくて敬遠している人も少なくないのかもしれないな・・簡単なのに、なんでこっちを使わないんだろう?と思ったりもします。

 私がセルフレジがフランスでも大丈夫なんだろうか?と思ったのは、商品のバーコードなどに通さずに容易に持ち帰れてしまいそうで、しっかり代金を回収できるのだろうか?と思ったからです。

 そもそもセルフレジなるものができる前から、フランスのスーパーマーケットでは、料金を支払う前にパッケージを開けて、お菓子やパンなどを店内で子供に与えていたりする親もいて、子供だけでなく、自分も平気で食べていたりします。

 それでも善良な人は空になったパッケージをレジに通して支払っていたりするので、それはそれでOKという認識なんだな・・とビックリしたりしますが、そうでない人もいて、食べかけのパンやお菓子などのパッケージが店内に置き去りにされていたりもするので、そのへんのところは、よく言えば、ずいぶん、自由というか、おおらかというか、悪く言えば、ルーズというか、お行儀が悪いというか・・まぁ・・こういう国なんだなぁ・・と思っていたのです。

 しかし、昨年からのインフレで、食料品もものすごい勢いでの値上がりで、このインフレについていけずに生活に貧窮している人々が、インフレで値上がりしている分を万引きして帳尻を合わせているというケースが急増しているのだそうです。

 物価の上昇は主に食料品に影響し、1年で10%程度が値上がりしています。パスタや米などの生活必需品は、1年で20%、30%、あるいは130%も値上がりしているものさえあります。

 私など、わりとざっくりしているので、正確な金額をチェックしているわけではありませんが、このくらいの買い物をしたら、だいたいこのくらいの金額になるだろうというような、なんとなくの感覚があったのですが、最近では少し慣れてきましたが、「えっ?これだけでこの値段??」と思うのですから、家族の多い人や食べ盛りの子供を抱える家庭ではさぞかし大変だろうな・・と思うのです。

 買い物のすべてを支払わないわけではなく、一部は支払いをして、一部はレジに通さずに持ち帰るというケースが増えたらしいのですが、なるほど、それは、セルフレジなどではけっこう簡単にできてしまうかもしれません。

 普通のレジにせよ、セルフレジにせよ、すべてのお客さんの荷物のチェックができるわけではなく、またすべてチェックをしていたら、セルフレジにする以上の人手が必要なわけで、私のよく行くスーパーマーケットでは、会計をしたレシートのバーコードを通すと出口のゲートが開くようになっているのですが、それがちゃんと機能しないことも多く、結局、違う場所から出てくださいと言われることも少なくありません。

 一応、セキュリティの人が出口にいて、たまに、レシートと出てきたお客さんの持っている買い物した商品をチェックしていたりするのですが、それもそんなに頻繁に見かけることではありません。

 しかし、一度だけ、私がセルフレジに商品をピッピッと通している最中に、一度、外に出たお客さんが持ち出した商品の中に支払われていない商品があったのを見つかった(つまり、買い物の一部を万引きしていた)人がセキュリティの人に連れられて、セルフレジに戻ってきた人がいて、「ちゃんと支払いをしてください」と支払いをさせられているのを見かけたことがあって、「ダメだよ!ちゃんと支払わなくちゃ!」と言われて帰されている場面に遭遇したことがありました。

 私は逆に「えっ?それで終わり?」とそのことにもビックリしたのですが、こんなちょっとの万引き程度で警察を呼ぶほど、フランスの警察は暇ではないんだろうな・・と、妙に納得したような気にもなりました。

 日本で万引きしたりした場合は、どのような扱いになるのかはわかりませんが、少なくとも、「ちょっとこちらへ・・」とか、なるんではないか?と勝手に思っていたのですが、どうなのでしょうか?

 インフレの為に万引きが増加している・・といいつつ、これに対するけっこう軽い扱いに、この盗まれる分の商品の価格が普通の商品の価格に上乗せされるのではないか?と妙な気を回したりするのでした。


インフレでスーパーマーケットの万引き急増


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2023年2月7日火曜日

やっぱりエッフェル塔近辺は治安が悪い シャン・ド・マルスでの観光客レイプ事件

  


 私は近所に住んでいるわけでもないし、特に行きたいお店が近くにあったりするわけではないので、滅多にエッフェル塔近辺に行くことはありません。

 昨年、たまたま近くに行ってみたいお店を見つけて、せっかく近くまで来たのだから、たまには行ってみようか?と、おそらく10年ぶりくらいにエッフェル塔に行って(といっても、ふもとまで行って、その近辺やシャン・ド・マルス公園を少し歩いた程度でしたが・・)、ずいぶんと、以前の印象よりもきれいになって、まだ工事中の部分もあったりして、「ここも工事中か・・」と思ったり、トゥクトゥクが走っていたり、そして、何より、パトロールしている警察官の多さに逆に、ちょっと怖くなったりしたのを思い出します。

 エッフェル塔近辺での事件は、昨年も、「一挙に12人が逮捕されたという観光客狙いの暴力を伴う強奪事件」や、この近辺を走っている「トゥクトゥクには、ぼったくり事件が続発している」とか、どうにも、いい話を聞くことはありません。

 そして、また今回は、外国人女性観光客のレイプ事件です。

 被害者は若いブラジル人の姉妹で、バーで出会った男2人との間に起こった事件で、お酒に酔って、外に出て、シャン・ド・マルス公園を歩いていた時に起こったようです。

 男性2人は故意に二人を引き離して、別々に歩きだし、それぞれに暴行を加えようとしたのですが、姉は必死に抵抗して逃れ、離れたところに連れていかれた妹を探した結果、妹はレイプされてしまった後で、男はズボンをおろした状態で寝転がっているところを姉に発見されたことに気付いて、慌てて逃走したということです。

 姉の方は、男が逃げていく様子を目撃しており、彼らが黒い車で逃走していったと語っており、近くに車を停めていることから、ある程度、逃走する用意があったのではないかとも考えられます。

 いずれにせよ、彼女たちにも大いに隙があったことは否めないところもあるのですが、観光客ならば、泣き寝入りする確率が高いとか、警察には訴え出る可能性が低いとか、地理的にも不慣れであったり、言葉がままならなかったりすることもあり、場所がら、観光客狙いの犯行であった可能性も大いに考えられます。

 昨年、私がエッフェル塔に行ったのは昼日中のことで、昼間は昼間でスリや置き引き、怪しげな物売りなどが多く、それにしてもこんなに警察官がいるの?とびっくりするほどでしたが、夜中を通して、そこまでの警察官の数を常駐させておくことも困難なことで、やはり、夜に出歩くことは、こう事件が多いと、特にエッフェル塔近辺は、危険だと考えざるを得ません。

 2024年、来年に迫ったパリオリンピックに向けて、フランスはパリの治安改善を叫んではいますが、一向に治安がよくなったとは思い難く、オリンピック開催期間中は特別な警戒態勢が敷かれるとは思いますが、それ以上にちょっと驚異的な量の人が集まるわけで、それにつれて、犯罪も爆発的に増えることは間違いなく、近隣諸国からもこのオリンピックで集まる人を狙っての犯罪目的の人も集まることと思います。

 パリは、そのインパクトとはうらはらに、東京などとは比較にならないほど小さい街で、一体、どうなっちゃうんだろうか?と、ちょっと恐ろしくもあります。

 パリにいらっしゃる場合は、残念なことではありますが、大変、治安の悪い場所であるということを忘れずに、特に夜間の外出などには、十分に警戒してください。

 この被害者姉妹は、被害届を提出し、司法警察が捜査を開始しています。


エッフェル塔 観光客レイプ事件 シャン・ド・マルス 


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2023年2月6日月曜日

ユーロの偽札が一番、流通しているのはフランス

ムービーマネーと言われる偽札

  

 通貨がユーロに代わった直後は、偽札がけっこう出回っている話を聞き、50ユーロ紙幣は受け付けないとか(今から考えれば、物価もずいぶん安かったんだな・・と思います)、ましてや100ユーロ以上の紙幣など受け付けてくれるお店もほとんどなく、それ以上の200ユーロ紙幣とか、500ユーロ紙幣など、なんで作ったのだろうか?と思ったものです。

 あれから20年以上が経ち、いつのまにか、私はほとんど紙幣というものを使わなくなって、ごくごくたまに、少額でカードを受け付けてくれないお店もあるため、そんな時のためにほんの少しだけ、たまに現金をおろしてお財布に入れてはいますが、さすがに銀行のATMから引き出すお札が偽札ということは考えづらく、しかも、少額なので、久しく偽札の心配というものを忘れていました。

 しかし、欧州中央銀行(ECB)によると、再び、この偽札の押収枚数が増加しはじめ、昨年は37万6000枚の偽造紙幣が欧州され、1年間で約8.4%増加しているということで、ポジティブに考えれば、それだけ経済活動が活発になったということの表れでもありますが、しかし、依然として、この偽札製造にチカラを注いでいる人がいることも見逃すことはできません。

 しかも、この偽札として押収された約3分の1がフランスで発見されたということで、約13万枚に相当すると言われています。その大部分は、50ユーロ紙幣と20ユーロ紙幣で占められているそうです。

 苦労して偽札を作っても、100ユーロ以上だと受け取る側もリスクが高いために入念にチェックするか、断ることが多いため、使いにくく、かといってせっかく作るのに10ユーロ以下だとベネフィットが少なく、最も流通の多い20ユーロ、50ユーロ紙幣になるのだと思われます。

 司法警察OCRFMによると、現在、SNSを通じて流通する紙幣が増加しており、これまでも偽札を輸入して流通させる大規模なネットワークがいくつかありましたが、テレグラムやスナップチャットで偽札を購入する人が出現しはじめ、今では全国に広がっているということです。

 これらの偽札の約3分の1は、中国からの「ムービーマネー」と呼ばれる偽札で、偽札の中でもセキュリティ機能を持たない、大変レベルの低いものではあるようですが、インターネット上で100枚あたり10ユーロという低価格で売っているそうで、小規模な商店やファストフード店などで使われてしまうことが多いそうです。

 しかし、この「ムービーマネー」に関しては、注意深く見れば、回避することも可能なようで、ムービーマネーには、正規のユーロ紙幣には、欧州中央銀行総裁のサインが、欧州の国旗の下、左上にありますが、その代わりに「movie money」という文字が書かれています。

 また、ギリシャ語のユーロ(ΕΥΡΩ)は、アクセサリー("PRΩP")という言葉に置き換えられているそうです。

 フランスが最も偽札の流通が多い国であるということは、残念なことですが、それだけ観光客も多く、通貨のハブ(中心)でもあり、ヨーロッパで偽札を生産する第一人者であるイタリアに近いためだなどと、またイタリアを怒らせるようなことまで言う人もいます。

 観光でヨーロッパを訪れる際には、やはり、いくらかのユーロ紙幣の現金を両替してお持ちになると思いますが、銀行や正規の両替所で両替した場合には、偽札である可能性も少ないと思いますが、下手なところで買い物をすると、おつりが偽札なんてことも無きにしも非ずなので、この手のトラブルを避けるには、やはりカードを使用する方が賢明のように思います。


ユーロ紙幣の偽札


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2023年2月5日日曜日

国連人権理事会、日本に死刑制度廃止を勧告とフランスの死刑制度廃止

   


 国連人権理事会が日本に死刑制度廃止を勧告しました。これは、国連加盟国に対して定期的な審査を行うもので、この勧告には法的拘束力はありません。

 今回、6年ぶりに100ヵ国以上から寄せられた300の提言の中で、日本に対しては「死刑制度の廃止」と「国際基準を満たす独立した人権擁護機関の設立」を要求しています。また、「外国人が収容される入国管理センターでの医療体制を改善し、長期間の拘束を避けるように」助言しています。

 この外国人を収容する入国管理センターでの外国人に対する不当な扱いなどは、かなり頻繁に目にした気がするので、おそらくかなり目立ってしまった問題なのかもしれません。

 特に注目されるのは、やはり、「死刑制度廃止」についての問題で、これについては、フランス(やドイツ)が特に大きな声を上げているようなので、フランスの死刑制度廃止の経緯から、フランスがなぜ死刑制度廃止することになったのかを見てみることにしました。

 今では「死刑制度廃止」を世界に向けて訴え、旗を振っている感のあるフランスではありますが、フランスが死刑制度を廃止したのは、そんなに大昔のことでもありません。

 フランスが死刑制度を廃止したのは、1981年のことで、これは遡って1972年に執行された死刑に端を発したものであり、これが冤罪であった可能性があり、フランスの死刑制度廃止に導いたと言われるロバート・バデンタール氏(弁護士)が「人を殺してもいない人間が法によって殺される可能性があるという事実は、古代の報復の法さえ超えている!」とそれまでの死刑制度に反旗を翻し、「死刑制度廃止」に向けて動き始めたのです。

 その後、バデンタール氏はこれを単なる議論だけには、留まらせずに、フランソワ・ミッテランの2度の大統領選挙キャンペーンに積極的に参加し、彼は法務大臣にまで上り詰め、1981年彼の国会での大演説により、フランスは「死刑制度の廃止」の道を選択し、フランスは世界で35番目に死刑制度を廃止した国となりました。

 フランスは、これは、フランスが人間の尊厳を守り、強化していくために重大な決断であったとしています。

 フランスが「死刑制度廃止」を絶対的に支持するのは、これが「最も基本的な人権を尊重するシンボリックなことである」と同時に、「死刑は犯罪との闘いにおいて有用な手段ではない」としており、「死刑がもたらす人命の損失は回復不可能であり、どんな法制度も正義の誤謬(ごびゅう)を逃れることはできない死刑の執行は単なる刑罰政策の手段ではなく、人権侵害である」としています。

 また、フランスでは死刑になるような国に人を送還することも禁じられています。

 一昨年、フランスの死刑制度廃止から40周年を迎えた式典では、当時、この死刑廃止運動を推進したバデンタール氏(現在94歳)も招かれ、記念講演会が行われ、「死刑は人類の恥である!」「未だ約50ヵ国が死刑制度についてモラトリアム状態を続け、2020年には、483件の国家による殺人が行われた」と、死刑制度を続ける国をかなり厳しく非難しています。

 私自身は、冤罪の可能性がある限り、死刑は執行するべきではないと考えますし、犯罪抑止を考えるなら、終身刑にして、その事件の背景や状況などを徹底的に究明し、今後の犯罪抑止に役立てるべきだと思っています。

 特に私には、当時、世界を震撼とさせた社会問題であったとも言われるオウム真理教事件などについては、犯罪に関わった人から、失敗したからこそわかるどうしたら新興宗教に騙されないかなどという考察はもっと得られたのではないか?と思っています。

 日本国民の世論の多くは「死刑制度は致し方ない」というもののようですが、その実、あまりこのことについて、考えていないのだと思います。

 日本の死刑についての情報は伏せられたままで、死刑執行後に「死刑を執行しました」という報告のみで、議論にも至らない状況であることは、国民を考えることから遠ざけているように思います。

 生き地獄という言葉もあるのです。一生、外の世界に出ることなく、償い続ければよいのです。家族を殺された遺族には、やるせない思いは残るでしょうが、だからといって、殺されたからといって、人を殺してはならないのです。

 ましてや冤罪であったりしたら、取り返しのつかないことです。

 人を殺してはいけないということは、国家とて同じことだと思うのです。


死刑制度廃止


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2023年2月4日土曜日

フランスでも報道される日本の「テロリズム SUSHI」寿司テロ

  


 今やフランスにもすっかり定着したSUSHIは、どこのスーパーマーケットにでも置かれるようになり、冷凍食品としても存在し、パリの街を歩いていても、かなり頻繁にお寿司屋さんを目にするほどになりました。

 そのクォリティは、それこそ、日本の回転ずしにも遥かに及ばないにもかかわらず、値段はかなりのもので、スーパーマーケットに置かれているものに関しては、へたをすると「酷いものだと「これ売り物なの?」と思うようなものまでが、15~20ユーロ(約2,000円~2,800円)くらいの価格で売られていて、また、それが売れているのに驚かされます。

 まあ、それでも売れるのだから置いているので、驚く方がおかしいのですが・・。

 そこまでフランスに浸透しているSUSHIですが、そういえば、回転寿司のお店はあまりありません。(全くないわけではない)

 フランスで回転寿司というものがあまり広まらないのには、いくつかの理由があると思いますが、寿司というものが、そんなに安いわけでもなく、設備投資にもお金がかかり、また、フランス人が好む「手作り感」だったり、「人がサービスするという形態」ではなかったりもするためとも思われます。

 しかし、そもそもフランスでは、回転寿司のような営業形態が成り立つほど、お客さんを信用できないということもあるかもしれません。

 考えてみれば、フランスのレストランでは、せいぜい塩、胡椒程度はあるにしても、各テーブルに備え付けのように置いてあるものはなく(頼めば持ってきてくれますが・・)、注文してからナイフとフォークも持ってきてくれるのが普通だし、お客さん側の善意に基づいて成り立つようなことはあまり存在していません。


 

 今回の「テロリズム SUSHI」に関しては、内容には、日本で報道されているとおりの内容ではありますが、この少年に関しては、「寿司を冒涜するティーンエイジャー」と表現しており、また、「衛生と清潔に関してはことさら厳しい日本」では、このニュースが大炎上しており、同社の株価は5%急落し、醤油の瓶をすべて交換し、店内のコップをすべて洗浄し、衛生対策を強化したと伝えられています。

 また、「おもてなし(OMOTENASHI)の国、日本なはずが・・」などと書いているところもあります。

 そして、同社に加えて、他の2つのチェーンも法的措置をとることを発表しており、カメラを設置して客を監視するシステムを導入することも検討されているとも・・。

 「寿司を冒涜する」という表現を使うところは、ある意味、寿司に対する畏敬というには、ちょっと言い過ぎではありますが、尊敬の念が感じられるところも、なかなか興味深いところです。

 悪ふざけにしては悪質で、幼稚なふるまいで、なにが楽しいのか全くわかりませんが、これが一部の若者であるとしても、そのあまりの幼稚さに情けない気がします。

 これは、無銭飲食でもなく、本人も何も得るものがないのにこのような行為に走るのは、テロとしか言いようがありませんが、もし、これがフランスだったら・・と考えれば、こんな生易しいことではすまなくなるような気もします。

 日本のサービスには、性善説というか、客側が善意の人であることを前提になされているものが多く、これらのことが日本でも成り立たなくなりつつあるのかもしれません。


SUSHIテロ 回転寿司


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