パンデミック以来、私が日本へ行くこともできなくなっただけでなく、日本から友人が来てくれることも、パッタリとなくなってしまっていました。
日本からフランスへの入国は、ワクチン接種さえしていれば、隔離もなく、さほど面倒なことはないのですが、日本に戻った時の隔離期間を考えると、まあ容易に海外に出るのは、難しく、旅行期間プラス隔離期間の日程をもってしても、検査だ隔離だ、公共交通機関を使わない移動だと、いつもはかからない余計な出費をも考えると、海外に出られるという人は、なかなかいるわけではありません。
12月の初めに、私は友人から、「年末年始にかけて、パリに行くつもりでいたんだけど、どうしよう?」と連絡があり、「パリは感染は増えているけど、みんな全然、普通に生活してるよ・・」と話していました。
彼女は、長いこと会えていなかった遠距離恋愛中の彼に会うためにフランスに来る予定にしていたのですが、現地の事情もよくわからないので・・と連絡をくれたのでした。
長いこと会えていなかった彼女の彼は、このパンデミックで、家族数名を亡くし、失意に暮れていたところに、彼女も「やっぱり行くのは、諦めようかな・・」と言い出したら、さらにガックリしてしまったそうで・・結局、彼女は、意を決してパリにやってきたのでした。
彼女は、エアフランスのチケットを予約していたのですが、予約していた便はキャンセルになり、翌日のフライトでパリに来たとのこと。彼女の住む地域には、パリへの直行便はなく、国内での乗り換えが必要なため、変更されてバタついたとのこと・・。
しかも、前日のフライトのキャンセルのために彼女の乗った飛行機は満席だったとのこと、航空会社からしてみれば、効率はよいとはいえ、この時期の長距離便(日本⇄パリは12時間)で満席状態というのは、なかなかリスクもあるのではないか?と少々、不安にもなります。
彼女曰く、日本での海外渡航用のPCR検査は3万円だったとかで、それが、当日の検査ともなると4万5千円なのだそうで、なぜ、PCR検査がそんな高額になるのか、それだけでもちょっとバカバカしい気分になります。
彼女が「フランスに行くかもしれない・・」と言うと、「まさか、ほんとに行くの?」と怪訝な顔をする人も周囲に結構、いたとかで、結局、ごくごく親しい人にしか話さずに来たとのこと。日本の厳しい雰囲気がなんとなく、想像つく感じもしたのです。
しかし、色々なことをクリアして、いざフランスに来てみると、「この自由な感じは、ホント、楽!」だったと話してくれて、その楽な感じにどっぷり浸かっている私は、逆に今、日本に行ったら、その厳しい感じがさぞかし、窮屈に感じるだろうと、そんな風にも思ったりしたのでした。
結局、この自由な感じが感染者を急増させていることには違いはないので、一概に日本の厳しさを責めることはできません。何といっても桁違いも桁違い、桁がいくつも違うほどの感染者を叩き出しているフランスと日本の空気感の違いは、言うまでもありません。
仕事関係の日本の人などが、「どうやら日本も感染が悪化してきたから、もしかしたら、また日本入国は、さらに厳しくなるかもしれない・・」などと話しているのを聞いても、日本での1日の感染者数は2,500人を超したくらい、フランスは?と聞かれて、「33万人を超えています」と言っても、もうどうにもお互いにピンと来なくなっていることを感じます。
これは、コロナウィルスにより生まれた新しいカルチャーショックの一つでもあるかもしれません。
もともと、世界中を渡り歩く仕事をしてきた私の友人は、順応性もあり、日本とフランスの現在の両方の様子を実際に体験して知っている貴重な友人ですが、フランスから日本に帰った時、時差ボケだけでなく、このコロナウィルスに対する温度差ボケに、ちょっとしたカルチャーショックを感じるのではないかと思いますが、幸い?現在、フランスから日本への入国の際には、6日間の隔離施設での隔離、その後、陰性の場合はさらに8日間の自主隔離期間があるので、その間に日本モードにシフトできるのではないか?と思っています。
彼女は、フランスでのPCR検査は、4-5,000円(旅行者)でそれほど高いわけではありませんが、現在は、検査は長蛇の列、2時間並ぶ苦行に大変な思いをしたようです。
そして日本に帰国後は、彼女には6日間の隔離施設での隔離プラス8日間の自主隔離というさらなる苦行が待っています。しかし、その隔離によっぽどうんざりしない限り、「また、春頃には来るから・・」と日本に帰国する前から、また来る気、まんまんです。
それにしても、フランスの状況は、現在のところ、少なくともあと1週間くらいは、この悪化が止まらないであろうという感染予報?が出ており、特に学校などは、学級閉鎖が10,800件、25,000人の生徒、4,000人の大人(教員等のスタッフ)が陽性、75,000人の生徒、3,000人の大人が隔離中とかで、また、隔離明けのタイミングもなかなか微妙でややこしく、学校は、なかなか混乱している模様です。
問題になっていたワクチンパスは国会で可決され、来週の上院での審議に備えている状況で、どうやら、予定どおり、1月15日からワクチンパスが施行される模様です。
この決定を受けて、これまでワクチンをせずにねばっていた人がこれでワクチン接種を受け入れるのか?とは、疑問でしたが、多少なりとも、これまで全くワクチン接種をしてこなかった人々がワクチン接種をし始めたと報道されています。
実際のところは、よくわかりませんが、初めてのワクチン接種を受けている様子のインタビューなどを見ていると、どちらかというと若者が多く、肝心の高齢者のワクチン未接種者の姿があまり見えないのは、気のせいでしょうか?
とにかく、ワクチン接種を進めること、ワクチンパスを施行させることを軸に進めているフランスは、私の友人が「楽!緩い・・」と感じたとおりにワクチン接種さえしていれば、ほぼ、日常の生活が送れるように、レストランやカフェ(食事やアルコールの提供、営業時間などは通常どおり)、その他の施設、店舗なども、閉鎖されてはいません。(ディスコなどは除く)
しかし、10万人あたりの感染率は、とうとう2,000人を突破、50人に1人は感染しているという計算になります。こうなると、本当に身近な周囲の人々の中にも、必ず感染者がいる感じを実感するようになり、ほんとうに明日は我が身です。いくら、フランスの社会が緩くても自分の身は自分で守らなければならないと実感しています。
今日、処方箋をもらってあった薬を取りに行こうと薬局に行ったら、もの凄い人で、あまりの人の群れに恐れをなして、明日、朝、早くに出直そう・・と帰ってきてしまいました。
日本のニュースを見ると、感染悪化のために、「蔓延防止等重点措置」だとか、アルコール提供停止、時短営業などを検討中だとか・・。感染者30万人でも、みな朗らかに暮らしているフランスから見ると、思わず「えっ?それだけの感染者数で時短営業? こちらのもはや天文学的数字の感染者数をよそに、日本の経済は大丈夫なの?」などと心配にもなってしまいます。
フランスと日本、もはや比較にならないどころか、あまりの別世界ぶりにどちらが正解なのかは全くわかりませんが、以前に書いたことがありますが、危篤状態になった時に、比較的、あっさり?諦める気がするフランスの医療と、何がなんでも延命治療をしようとする日本の医療に見られる死生観の違いのようなものが、このコロナ対応にも反映しているのではないか?などと思ったりもするのです。
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