フランス人が日本に行って、びっくりすることの一つに、「公共の場にゴミ箱が少ない」というものがあります。そして、さらに彼らがびっくりするのは、「ゴミ箱が少ないにもかかわらず、街には、ゴミが落ちていない」という点です。
彼らは言うのです。「あんなにゴミ箱が少ないのに、街にはゴミは落ちていない。一体、日本人はどこでゴミを捨ててるんだろう?」と。
私自身は、日本にゴミ箱が少ないとは感じませんが、そういえば、パリ市内は、やたらとゴミ箱はたくさんあるような気がします。日本は、地下鉄サリン事件以来、保安上の問題で、確かにゴミ箱は以前よりも減ったようです。
私自身は、あまり気づいていなかったのですが、最近、ここ数年(といっても、コロナ前の話ですが・・)周囲のフランス人で、日本に行く人が増え、私が日本人だと知ると、日本へ行ったことがある!という人や、知人や家族が日本に行ったことがあるという人が必ずいて、これまで遠い東のアジアの国の一つでしかなかった日本に触れる機会が増え、こぞって日本を褒めてくれるのです。
日本人の私としては、お世辞が上乗せされていることは分かっていても嬉しいことです。
おそらく日本人が知っているフランスの情報以上に、フランス人が知っている日本の情報は曖昧なもので、実際に行ってみると、そこは、まるで別世界の新鮮な体験が待っているのです。
日本の街並みや文化、食事、生活の仕方、眠らない街、時間どおりにやってくる電車、ゴミ箱がないのにゴミの落ちていない街。彼らにとって、新鮮な驚きはたくさんあるのです。
考えてみれば、私がフランスに来たばかりの頃は、その逆のことに、私もいちいち驚いていたんだと思いますが、今では、もう慣れ切ってしまって、フランスは、こんなもの・・と驚くこともなくなっていました。
パンデミック以来、スーパーマーケットの入り口には、アルコールジェルや除菌スプレーが備え付けられるようになって、最近、私は、買い物に行くと、備え付けられたキッチンペーパーのようなものにアルコールのスプレーを多めに吹きかけて、買い物の最中にはそれを持ち歩いて、気に掛かるものを触った後には、手を拭くようにするようになりました。
先日、買い物が終わって、セルフレジに行って、会計を始めようと思った時に、その持ち歩いていた紙をフワッと落としてしまったのに気づいて、その紙を拾ったら、その場を取り仕切っているスーパーマーケットの店員さんに、「ありがとう!」と、大げさに感謝されたのです。
最初、私は、何に対して、お礼を言われているのか、よくわからなくて、「えっ??」と彼女の方を振り向いたら、「だって、あなたは、落とした紙を自分で拾ってくれたでしょ!そんなこと、滅多にないことよ!」と言われて、さらにびっくりしました。
私は、自分が落としたゴミを自分で拾っただけなのです。
このご時世、他人が落としたものを拾うのは、(しかも、他人が使った除菌用の紙などは特に・・)躊躇われるところです。ましてや除菌用に使った紙など、触りたくないに違いありません。
当初、最初のロックダウンの時から、日常必需品を扱っているスーパーマーケットは、感染がどんなに悪化している状態でも決して閉鎖されることはなく、店員が感染して、死亡したというケースも何件も起こっていました。
しかし、衛生管理に気を配りながら、きっと、落ちているゴミも拾いながら、彼女は仕事を続けてきたのでしょう。
ここで、感激してお礼まで言ってくれるのが、フランス人らしいところではありますが、お礼を言われた方は微妙な気持ちになります。
日本に行ったフランス人が「ゴミ箱がない!」と思うということは、少なくともゴミをゴミ箱に捨てようとしているから、感じることだとは、思うのですが、実際のパリはゴミだらけ。
パリでの日常の、彼らのゴミに対しての無頓着さと、ゴミ箱がたくさんあるのに、ゴミだらけのパリをあらためて、納得させられる1シーンでした。
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