2021年2月5日金曜日

ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見

        

   Discours de Castex : vacances de février, vaccins... Les annonces


 昨夜、カステックス首相の記者会見が行われるというので、多くのフランス国民が注目していました。とはいえ、先週のような緊急会見ではなく、数日前から予定されていた会見、しかもカステックス首相の会見と聞いていたので、この会見がロックダウンに踏み切る会見とは思っていませんでした。

 しかし、今週末から冬休みのバカンスに入るフランスは、バカンスに際して、何らかの制限が加わるのではないかとは思っていました。

 18時という約束どおり、きっちり18時に始まった会見にカステックス首相は、なぜか、満面の笑みをたたえて登場し、依然として危険な状態ではあるものの極度の感染爆発は迎えておらず、現在の制限内容に変更はなく、さらに衛生管理、検査、隔離を強化しつつ、現在の時点では、ロックダウンをせずにできることで、感染拡大を回避していく方針を発表しました。

 ロックダウンは、あらゆる事業、教育機関を止め、国民を経済的にも精神的にも追い詰めてしまうものであり、あくまでも、最終手段として考えるのは、当然といえば、当然のことです。

 夜間外出制限を始めとする、あらゆる制限に関する取り締まりを一層、強化することで、現在の制限内に留め、リモートワークを全くしていない企業に対しての指導も行っていくとしています。

 すでに一週間で39%の取り締まり体制の強化により、罰金を徴収された数は、53%増加しています。

 若干の増加はしているものの、ほぼ数値は横這い状態を保っている段階で、確かに現在の制限でさえ、まだ引き締める余地があるフランスでは確かにロックダウンの前にまだまだできることがあるのかもしれません。これでロックダウンが避けられるなら、こんなに良いことはありません。

 私がこんな風に感じたのも、その記者会見の見事さで、会見は、首相をはじめとして、厚生大臣、労働大臣、内務大臣、産業大臣が同行し、あらゆる角度から、理路整然とそれぞれの管轄に関わる現状と対策を述べ、質問に応じて、微塵も淀むことなく回答する、どっからでもかかってこいという確固としたものであったたこともあるのかもしれません。

 どんなものでも跳ね返す鉄のバリアって感じだったかな?

 質問に応じて首相が各担当大臣に回答を振り分け、首相がほどよいタイミングで纏めるその会見は、充分にトップ内で話を練り込んでいる証拠であり、またそれぞれがきちんと話すことができる、フランス人の話す能力を感じます。(口ばかりが達者というところもありますが・・)

 特に、政治家の話す能力は、大事だなぁ・・とこの会見であらためて、感じたのでした。

 とはいえ、今週末から始まるバカンスに関しては、移動制限は設けないとしており、(クリスマスの時ほどの移動は見込まれていないが・・)その点に関しては、不安が残ります。

 横這い状態とはいえ、非常に高い数値での横這い状態、いつでもロックダウンになる可能性があり、バカンス期間の途中で突然、ロックダウンになった場合には、自宅に戻る長距離移動は、許可されるという妙に具体的な内容も含まれていました。

 ヨーロッパ内では、現在はスペインが一番、1日の新規感染者が多く(スペインは制限が一番緩い)、次いでフランスが2位という高い感染者数を維持?し続けており、フランスは、もはや、一時、驚異的な感染者数を叩き出していたイギリス(現在も死者数は多い)やドイツを追い越しています。

 ロックダウンを望んでいる国民が半数以上を占めているフランスは、国民の危機感も高くなっていて、今日、買い物に行ったら、入り口のアルコールジェルの消毒のスペースには、人が並んでいたのには、びっくりしました。

 なんとか、国民の危機意識を保ちつつ、ロックダウンをせずに乗り越えられれば良いのですが、今にも爆発しそうな状態に少しも気は緩められないのです。


<関連>

「コロナウィルスに関するマクロン大統領のテレビ放送を見て思うこと」

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「カルロスゴーン会見に見るフランス人流の自己主張の仕方」

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2021年2月4日木曜日

「コロナがどういう形であろうと東京オリンピックは開催する」とは何と思いやりのない言葉なのか?

   Les Jeux Olympiques de Tokyo doivent débuter le 23 juillet prochain


 これまで、東京オリンピックに関しては、これまでフランスでは話題に上ることもありませんでしたが、先日、ちらっとニュースでオリンピックに関するニュースをさらっているのを見かけました。

 フランスのラジオ局RTLなどが実施した世論調査によると、今年夏のオリンピックの開催を望まない・開催されないだろうとの回答が多数を占めています。

 当然です。世界はオリンピックどころではないのです。

 つい先日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が「私たちはコロナがどういう形であろうと必ずオリンピックを開催する」「やるかやらないか?という議論を超えて、どうやってやるのか、新しいオリンピックを考えよう」などと発言していることが、伝えられています。

 「コロナがどういう形であろうと・・」とは、どういうことなのでしょうか?

 「やるかやらないか?どうやってやるか?」ではなく、どうやってやめるか?でしょう。

 オリンピックが開催されないことは、残念なことではありますが、それ以上に残念なのは、多くの人々がコロナウィルスで苦しむ状況の中での、このような思いやりのない発言です。

 幸いなことは、これが日本の総意として伝えられてはおらずに、開催か否かについて、日本国内でも意見が分裂していると伝えられていることです。

 現在のヨーロッパは、ほぼ昨年のコロナウィルス発生時のような、またそれ以上と思われるピークを再び迎えつつあり、一日何千人もの人が亡くなっているのです。

 躍起になって進めているワクチン接種も供給が間に合わずに難航しています。

 世界は、オリンピックよりも何よりも、まずこの感染を抑え、ワクチンによって、なんとか日常を取り戻したいと思っているのです。多くの人が、オリンピックを開催するために選手らのワクチン接種が優先されるべきではないと考えています。

 フランスも今、ロックダウンか否かで日々、ニュースは持ちきりです。森会長の発言が取り上げられるほどニュースに余裕もないことは幸いです。

 昨日は、現在、危機的な状況を迎えているポルトガルで、病院の前で救急車の渋滞が起こり、埋葬の間に合わない棺が冷蔵室で山積みになっている映像が繰り返し流されています。

 このような近隣諸国の危機的な状況を見て、あらためてコロナウィルス感染の恐ろしさを再認識し始め、フランス人の55%は、昨年3月のような厳しいロックダウンを自ら望んでいる状況なのです。

 夏までこの状態が続くとは思えないし、思いたくはありませんが、昨年と同じサイクルで感染が続いているということは、昨年、オリンピックを断念した時と、同じ状況にあるということです。

 ワクチンは開発されましたが、ワクチン接種には、時間もかかり、また、変異種に対しての有効性は、減少するとも言われています。

 フランスでは、東京オリンピックを2024年に延期してパリオリンピックを2028年に開催することが最も良い解決策だとも言われています。

 

<関連>

「世界は、オリンピックどころではない 日本人は、世界のニュースを見るべき」

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「どんなことがあっても、東京オリンピックやるの???」

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2021年2月3日水曜日

コマーシャルセンターのロックダウンとバカンス容認のチグハグ

   

コマーシャルセンター内の通信関係の店舗も今回の制限で営業停止


 滞在許可証の更新のいざこざで、印刷をしなければならない書類が立て込み、印刷用の用紙が一気になくなっていたことに気付いて、慌てて買いに行こうとして、「これは、食料品でもないし、生活必需品でもないから、スーパーマーケットの中の文具類を置いているコーナーも閉鎖になっているはずだから、もしかして、買えない??」と、ちょっとギョッとしながらも、前回のロックダウンの際も、閉鎖とはいえ、ゆるゆるにテープが張られているだけで、きっと買えるな・・と目論んで、近所のコマーシャルセンターに入っているスーパーマーケットに出かけました。

 果たして、私の予想を超えて、スーパーマーケット内は、ゆるゆるのテープが張られることもなく、全く何の制限もされておらず、無事に?買い物はできたのです。恐らく、スーパーマーケット側も先週末に発表されたばかりの制限に、急ぐこともないと思っているのか? 注意されたら、テープを貼ればいいくらいに考えているのかもしれません。

 しかし、目的の買い物を済ませて、スーパーマーケットを出て、あらためて、コマーシャルセンターの中を見回すと、ほとんどの店がシャッターをおろし、電気も消えてガランとしています。

 10月末のロックダウンの時には、生活必需品を扱う店舗の枠には、通信機器を扱う店舗や電気製品を扱う店舗が含まれていたのですが、今回の制限では、それらの店舗は、コマーシャルセンター内では、営業許可になっておらず、全店閉店です。

 ロックダウンをしない方向でとしていた政府の発表から、このコマーシャルセンター内の様子を見ると、これは、前回のロックダウン以上だと愕然としました。開いているのは、スーパーマーケットと薬局だけです。これでは、昨年3月の最初のロックダウンの時のようです。

 もっともこれは、コマーシャルセンターのことで、一般の小規模の店舗は午後6時までは営業しているわけなので、ロックダウンとは違いますが、コマーシャルセンター内の光景は、ちょっとショッキングでした。

 考えてみれば、政府の発表のとおりなのですが、この状況は、私の中で具体的にイメージできていませんでした。

 今回の制限は、ロックダウンをしないで感染を抑えるということで、夜間外出禁止の取り締まりも、これまでの3割以上の人数を動員しての厳しいもので、取り締まりにより発生する18時前後の渋滞は、かなりのものです。

 ロックダウンをしないとはいえ、かなり厳しい制限下になってきた感じがひしひしとしてきたフランスですが、どうにも解せないのが、今週末から始まる冬休みのバカンス中の制限が今のところ、全くなしで、「どうぞバカンスには、お出かけください」という姿勢です。

 海外からの出入国に関しては、EU圏内の例外を除いては、禁止になっているものの、多くの店舗を営業停止にしながら、ここでまた、バカンスにより国内での感染を流通させてしまうことに歯止めをかけないのは、理解不能です。

 まったく、フランス人のどこまでもバカンスファーストには、閉口してしまいます。

 コマーシャルセンター内のメガネ屋さん(チェーン展開のお店)からは、「現在、コマーシャルセンター内の店舗は営業できませんが、店内には、係のものが待機しているので、営業している店舗との連携をご紹介できますので、お気軽にご相談ください」とSNSでメッセージが入っています。

 こんな風に商売熱心なのは、フランスにしたら珍しいことで、度重なる営業停止による必死さが伝わってきます。こんな思いをして、店舗を閉鎖しているのに、「バカンスには、どうぞお出かけください」とするチグハグさには、甚だおさまりのつかない気分です。

 昨夜、マクロン大統領は、テレビのインタビューで、夏の終わりまでには、希望者全員にワクチン接種が終了することを約束し、「現在の対応については、毎日、感染者数、病床占拠率(特に集中治療室)、感染率、変異種の拡大推移等を毎日分析して、その時に最も適した対応をしているので、現在の措置に関しては、自信を持っている」と語りました。

 その、あまりに自信満々の様子に私は、呆気に取られた気分で、この自信満々でいられるところも一種の才能だと妙な感心をしてしまいました。

 しかしながら、心配されるイギリス変異種は、1月1週目には、感染者の7%程度だったものが、現在は、20%にまで上昇しています。

 ウィルスが活発になる気候も合間って、このままの感染状況が続けば、一歩でも間違えば、昨年の感染爆発と同じタイミングで2月末から3月にかけて、再び同じ時期に同じことが起こります。今やウィルスが気候の影響を大きく受けているということは、明白ではありますが、しかし、同じことを再び繰り返すのは、あまりに愚かしい気がするのです。


<関連>

「フランス人の金銭感覚 フランス人は、何にお金を使うのか?」

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「バカンスを何よりも優先するフランス人 フランスに Go Toキャンペーンはいらない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_12.html

「コロナウィルスの感染は、明らかに気温が影響している ドイツの食肉処理工場で1500人感染」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/1500.html

2021年2月2日火曜日

フランスの文化チャンネル カルチャーボックス Culturebox


Raphäl Yem et Daphné Bürk (France  Télévisions)


 フランステレビジョン(国営)は、2月1日から、文化チャンネル・カルチャーボックス(Culturebox)を開設し、コロナウィルス感染対策で文化施設が閉鎖されているため活動ができない状態のアーティストと一般の人々とのつながりを再構築するため、500万ユーロ(約6億4千万円)の予算を投入し、一般家庭の地上波テレビ・チャンネル19で、フランスのあらゆる文化的なプログラムを無料で見ることができるサービスを開始しました。

 この無料チャンネルは、文化施設が再開されるまでの期間限定とされていますが、ひとまず、3ヶ月間は、24時間アクセス可能です。

 月曜日は、劇場でのミュージカルや演劇など、火曜日は、クラッシック、バレエ、オペラなど、オランジュ音楽祭で歌われるカンタータ「カルミナブラナ」で始まり、レンヌのオペラハウスで行われた「白い貴婦人」なども見ることができます。水曜日はコンサートです。

 このように曜日によってプログラムが組まれており、金曜の夜には、コメディの舞台、週末には、ドキュメンタリーや航空ショー、日曜日には、美術館などが見られるようになっています。

 また、来週には、学校のバカンスが控えていることもあり、バカンス期間には、「私の最初の白鳥の湖」、「ピーターと狼」、「海中の20,000のリーグ」、「勝者を愛する」などの若者向け、家族向けのプログラムも用意されています。

       


 驚くべきは、このチャンネル開設の動きのスピードの速さで、これは、1月12日、ヴァイオリニストのルノー・カピュソンがツイッターでフランスの文化のためのチャンネルを作ることを呼びかけたことから、始まっています。この呼びかけが、崩壊の危機に瀕している文化部門のための公共サービス側の強い連帯を構築し、一気に実現化しました。

 また、これに対する文化省の動きも早く、この呼びかけからまもなく、フランステレビジョンの仕様を変更する法令を採択し、新しいチャンネルが放送できるようになりました。

 このチャンネルは、現在、活動の場所を奪われているアートとエンターテイメントの世界が健在であることを強調することを目的として始まったことではありますが、日頃、行きたいと思いつつ、行こうと思えばいつでも行けるにも関わらず、バレエやオペラ、コンサートなどには、滅多に足を運ばない私などには、家にいながら、無料で舞台芸術を見ることができる思わぬ僥倖です。

 もちろん、劇場で見るような臨場感は味わえないものの、フランスの芸術に触れることができるチャンスです。

 また、国がかりで、これらのフランスの芸術、文化を守ろうとしているところが、いかにもフランスらしいところで、嬉しくもあり、頼もしくもあります。

 この外出もままならぬ時期の思わぬサービス、家で楽しめることが増えて、感染回避の一端をになってくれることになるとさらに嬉しいです。

 この時期にテレビで触れた舞台芸術に、いつの日か、直に触れられる日には、今までには、いなかった層の人々が劇場に足を運んでくれるようになることを期待しています。

 私も自由な日常が戻ったら、ちょっとおしゃれをして、劇場に足を運びたいです。

 日本の素晴らしい芸術や文化も国は守ってくれているのかな? とふと思います。

 日本の芸術や文化は世界に誇れるものです。


<関連>

「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/7000.html







 

 





2021年2月1日月曜日

コロナ禍で、日本では可能でもフランスでは不可能なこと フランス人に黙食はあり得ない

  


 3月からのパンデミックで、フランスで、一番、営業停止期間が長く、割りを食っている業種の一つは、レストラン業界です。3月から5月にかけてのロックダウン期間はもちろんのこと、ロックダウンが解除されても、レストランの営業は、すぐには許可されませんでした。

 夏の間の数ヶ月は、営業できたものの、秋からはまた営業停止、昨年以来、営業できたのは、ほんの数ヶ月のみ、今後の営業再開の見込みも全く立っていない状態です。

 本当にどうやって、乗り切っているのか、姿を消してしまう店舗もチラホラ目立ち始め、残念で、心が痛みます。

 食事の際には、マスクを外さなければならないことから、一番、感染の危険性が高いとされ、食事の際にどれだけ飛沫が飛んでいるのかという検証をしているNHKの映像が、一時、フランスのテレビでも頻繁に流されていました。

 先日、フランスのテレビ番組のインタビューに答えて、パリのレストランのオーナーが長きに渡って営業できない現状を訴え、「自分たちも衛生管理に気を配り、営業することは充分に可能だ!」「日本なんて、ずっとレストランも営業を続けている!」と言っているのを聞いて、「日本を引き合いに出すとは・・と、ちょっとな〜〜」と思ったのです。

 それは、フランス人にとっての外食というものが、日本とは、全く違うものであるからです。フランス人にとって、外食するということは、食事そのものよりも、人と会うことであり、人と喋ることであるからです。

 日本では、「黙食」を呼びかけるレストランが登場して、この呼びかけが広がりつつあるというニュースを見ましたが、フランスで、「黙食」は、あり得ません。レストランで黙って食事をしているフランス人などは、滅多に見かけることはありませんし、むしろ、「本当によく喋る人たちだな〜」と思うことの方が多いです。

 食事中の彼らの会話の様子は、まさに最も危険とされる「口角泡を飛ばして」喋る印象があります。日頃から、身振り手振りのジェスチャーを加えながら、大袈裟に喋るフランス人は、仲の良い友人同士の食事中などは、特に勢いよく喋っています。

 科学的な根拠はわかりませんが、なんだか、日本語の発音というのは、フランス語に比べて、飛沫が飛びにくい言語であるような気もしています。

 フランスでは、感染対策とはいえ、もしもレストランが営業しても、「黙食」を呼びかけるレストランもないでしょうし、それをお客さんが受け入れるとも思えません。たとえ、お店側がどんなに衛生管理に気を配っても、座席の間隔をあけるとか、アルコールジェルを設置するとか、その程度のことで、お客さんに「喋るな!」とは、言えないだろうし、言わないと思います。

 これがフランスの日常生活の文化であり、習慣であると言えばそれまでなのですが、フランスでは、「黙食」が受け入れられる文化ではないのです。

 「日本ではレストランもずっと営業している!」と訴えていたパリのレストランのオーナーは、日本のレストランの「黙食」の話を聞いたら、どんな反応をするのか? 逆に聞いてみたい気がします。

 しかしながら、あれほどフランス人が忌み嫌っていたマスクをする習慣ができただけでも、フランスでは、一年前までには、考えられなかった日常の変化です。それでも、最近ようやくマスクをするようになったフランス人には、くしゃみをする時にマスクをずらしたり、大声で叫びたい時にはマスクを外したり、意味不明の行動が目につきます。

 無意識にやっていることなのでしょうが、日常の生活習慣、ことに細かな衛生に関わる習慣というものは一朝一夕には、培えるものではなく、つくづくフランス人の日常の生活習慣というものは、悉く、何から何まで、ウィルス感染に最適なものなんだなぁ〜と、思うのです。


<関連>

「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_28.html

 

2021年1月31日日曜日

ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?

 

 Manifestation contre la loi "Sécurité globale" à Paris, le 30 janvier 2021


 現時点では、ロックダウンをしない選択をしたフランス。この選択が良い選択だったと思っているのは、48%、悪い選択だった・・ロックダウンをするべきだったと考えている人は、52%という世論調査の結果が出ています。

 この数字からも規則に縛られることが大嫌いなフランス人でさえも、かなりの危機感を持ってはいるということがわかります。しかし、今となっては、ロックダウンに反対の割合もずっと増えていることも事実です。

 特に若者の間の精神的なダメージによる自殺が増加するなど、「コロナウィルス感染よりも人と関われない孤独が怖い」という若者も少なくありません。

 日曜日から営業停止となるコマーシャルセンターなどには、冬のソルド(バーゲン)のラストチャンスを狙って、かなりの人出で賑わいました。今年のソルドは、例年の予定よりも遅く始まったにも関わらず、また、このタイミングで、また、営業停止です。

 もっとも、ロックダウンせずに、さらなる制限となれば、他に手立てはありません。

 また、あいも変わらず、土曜日のデモは、フランス全土(パリ、リヨン、ナント、レンヌ、ボルドー、ストラスブールなど)で行われ、3万人以上がデモに参加し、警察との衝突で、35人が逮捕されています。

 デモは、グローバルセキュリティ法に反対するデモではありますが、デモの終盤には、こんな生活やってられない!と暴れ出す人までいて、もはや何に対して抗議しているのかわからないようなところもあります。

 デモというのは、本来は、何らかの問題に対して抗議する活動でありますが、フランスでは、一部には、デモをすること自体が目的で、ストレス発散の場のようにしている人もいるのも事実です。

 前日に「現在は、危険な状況ながら、制限を追加しつつ、衛生管理を強化して、ロックダウンは回避して様子を見る」との発表があったばかり・・より注意しなければ、ロックダウンになると言われているのに、デモに出かける人が後を経たないことは、絶望的な気持ちにさせられます。

 グローバルセキュリティー法に関して、今、このロックダウンか否かの瀬戸際の状態で抗議しなければならないことなのか? 全く理解ができません。

 また、日曜日からは、EU圏外の出入国が禁止され、EU圏内でさえも、厳しく制限されますが、感染状態がフランスよりさらに深刻なスペインでは、政府の方針の違いから、22時以降の夜間外出制限はあるものの、それ以前の時間帯には、バーから美術館、レストラン、劇場に至るまで公共施設が閉鎖されていないことから、マドリッドなどには、フランスからの観光客がかなりいるようです。

 急な国境制限とはいえ、現在、スペインにいるフランス人観光客は、急いで日曜日までに帰国するか、それ以降に帰国する場合は、入国時にPCR検査を受けなければなりません。

 現時点では、ロックダウンはしないことを決定した政府も必死であり、警察の取り締まりは、厳しくなったようで、土曜日1日だけで、営業禁止に違反しているパリのレストラン24軒が検挙されたようです。

 今回のロックダウンをしなかった判断は、選挙を控えた政治的な判断であったとの批判も少なくなく、マクロン大統領は、ツイッターで、「私は、自信を持っています。私たちが生きている時間は非常に重要な時間です。一緒に感染を止めるためにあらゆることをしましょう」と呼びかけています。

 しかし、フランスには、夜間外出禁止ならば、夜は、家で人と集い、より感染の悪化したスペインに行って、レストランなどの普通の日常に近い生活を楽しみ、ストレス発散にデモに出かける人がたくさんいるのです。

 高いレベルでの感染状態が続き、ジリジリと増加を続けるフランスは、いつ急激な感染拡大を迎えるかわからない時限爆弾を抱えているようなものです。

 実際に、昨日の新規感染者数は、24,000人を超えており、もはやイギリスの新規感染者数を上回っているフランスなのです。

 結局のところ、猶予が長引いただけで、結局、いずれ、ロックダウンになるのを待っているような中途半端なジワジワと制限が厳しくなる状況は、より一層の国民の動揺を招き、感染も封じ込められない最悪の決断だったような気がしてなりません。


<関連>「まだロックダウンしないフランスの真意」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_30.html

2021年1月30日土曜日

まだロックダウンしないフランスの真意


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 金曜日の夜18時に、マクロン大統領がエリゼ宮に防衛評議会を招集したというので、これは、いよいよロックダウンだと思いました。

 フランスのコロナウィルスの感染は、劇的な悪化はしていないものの、確実に増加しており、夜間外出禁止の時間前倒し(18時以降外出禁止)が、感染減少には繋がるほどの効果が出ていないことは明らかな状態です。

 防衛評議会は、1時間ほどで終了し、そのおよそ1時間後には、カステックス首相の会見が開かれるというので、その会見内容が注目されていました。

 なぜ、マクロン大統領が出てこないのか? なぜ、カステックス首相が会見するのか? それだけでも、ほんの短い時間にざわつきました。

 しかし、カステックス首相の会見で、今回は、マクロン大統領が出てこなかった理由がすぐにわかりました。つまり、ロックダウンではなかったのです。

 カステックス首相の会見内容は、夜間外出禁止の効果は出てはいるものの、充分ではない。しかし、今しばらく、さらに衛生管理を強化し、状況を見守る猶予期間を取るものとする。

・EU圏外からの入国禁止

・リモートワークの強化

・20,000㎡以上のスーパーマーケット、ショッピングセンターの食料品以外の店舗、コーナーの閉鎖

・夜間外出禁止、営業禁止店舗(レストランなど)の取り締まり強化

・検査・隔離の徹底

 海外からの入国禁止とコマーシャルセンター・スーパーマーケット内の一部閉鎖以外は、これまでと大して変わらない内容の発表は、ほんの5分ほどで終わりました。

 なんだか、肩透かしを食った内容でしたが、この内容の制限のみで、感染が減少するとは考えづらく、「もっと、気をつけろよ! できなければ、ロックダウンだぞ!」という、ロックダウンを決行する過程の精神的なショックや政府に対する反抗回避への1クッションであったような気がします。

 感染症専門家の多くは、今の段階で、これだけの制限に留めることには、かなりの疑問を抱いている人が多く、特に変異種の拡大は深刻であることから、特にパリの医療体制は、かなりの逼迫状態にあり、患者の移送さえも始まっている状態であるといいます。

 1週間後には、フランスでは、冬休みのバカンスに突入するので、その期間にロックダウンを重ねれば、学校を閉鎖する期間をそれに重ねることもできるのですが、その時期に制限がない場合は、逆にまた、多くの人が国内を大移動し、感染を拡大させることになります。

 賛否両論はあるにせよ、多くの人がロックダウンを信じて疑わなかった状態での今回のカステックス首相の発表内容には、やはり、内心は、一瞬、少々ホッとしたものの、しかし、依然として、いずれロックダウンになるであろうという思いには、なんの変わりもありません。

 ただ宙ぶらりんだった状況の中、現在の段階ではロックダウンしないにせよ、動揺する国民の気持ちになんらかの新しい発表が必要なタイミングであったのかもしれません。

 本来ならば、衛生管理は、まだまだ努力の余地が大いにあると思えるフランスではありますが、それができないから現在の状況に至っているわけであり、より具体的な制限や対策がない限り、ロックダウンする以外に道はないのです。

 検査と隔離の問題だけを見ても、検査は、かなり可能な状態ではありながら、肝心の隔離ができていない状態がフランスではずっと続いているのです。

 経済的なダメージや国民の精神的なダメージのために、なんとかロックダウンを回避、あるいは、先送りしようとしているのもわかりますが、危機的状況を迎えれば、結局は、ロックダウンもさらに厳しいものになり、より長いものになることは避けようもありません。

 結局は、感染が爆発的な上昇を見せない限り、ロックダウンには、踏み切れないことに憤りを感じるのです。


<関連>「なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_28.html