2026年5月16日土曜日

9月3日からEUはブラジル産の食肉輸入を禁止

  


 EUはメルコスールと協定を締結し、5月1日から暫定的に発効させ、南米諸国からの食肉輸入を円滑化するとともに、食肉輸入を許可する国のリストを発表しました。

 今回、その中で注目されているのは、そのリストから「ブラジル」が除外されていることです。メルコスール加盟国のほとんど(アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイなど)は、リストに含まれているものの、ブラジルは例外となっているのです。

 ブラジルが除外された理由は、ブラジル産食肉が畜産における抗生物質の過剰使用を禁止するEUの基準を満たしていないためとされています。

 欧州委員会報道官は、ブラジルがリストから除外されたことで、牛肉だけでなく、鶏肉、卵、魚、蜂蜜などもブラジルはEUへ輸出できなくなると明言しています。

 実際、ブラジルがEU・メルコスール協定に署名したからといって、欧州の衛生植物検疫規則の遵守義務が免除されるわけではありません。

 EU圏内で生産されたものと同じ基準を満たしてなければならないのです。

 この問題に関しては、フランスの農業団体は、長い間、不満を爆発させていました。この非常に厳しい欧州規制を満たすために、フランスの農家や畜産農家は、高いコストを支払って生産してきたわけで、そこから、その規制を遵守しない輸入品が安価な価格でフランスの市場を脅かしてきたことに農民たちは、怒りを爆発させてきたのです。

 これは、非常に妥当な規制であると思うのですが、逆にブラジルが9月3日までに欧州規準を満たすことができれば、リストに加えることができるということでもあります。

 今回、ブラジルがこのリストから除外されたことは、EUが抗菌剤耐性対策に真剣に取り組んでいることを示す前向きな動きであるとも言えます。

 EUでは、動物の成長促進や収量増加を目的とした抗菌剤の使用は禁止されており、また、ヒトの感染症治療薬として指定されている特定の抗生物質も家畜への使用は禁止されています。しかし、ブラジルの畜産においては、これらが使用されている場合も少なくないということなのです。

 では、実際にブラジルからの食肉が入らなくなることが、フランスには、どの程度、影響があるのかを調べてみたら、フランスの食肉輸入は、主にEU圏内(アイルランド、ベルギー、ドイツなど)からで、ブラジルは主要供給国にはなっておらず、ほんの数パーセントにすぎません。

 ブラジルからしたら、メルコスール協定を締結したことで、販路拡大を見込んでいたのでしょうが、そうは簡単にはいかないということです。

 そもそもフランスは欧州最大の食肉生産国でもあるため、輸入依存は比較的少ないのです。

 私がスーパーマーケットやマルシェなどのお肉屋さんを見ている印象でも、ここ数年は特に、トリコロールのラベルの貼られたものがズラーッと並んでいて、どんだけフランスアピールするの?と驚くほどで、それ以外は、あまり目に入りにくいのですが、ブラジル産の肉というものは見た記憶がありません。

 全体として、フランスの食肉供給は、まず国内生産を優先、不足分をEU圏内で賄っているという感じになっています。

 EU・メルコスール協定は、関税を引き下げる、貿易手続きを円滑化する、市場アクセスを改善するための協定ですが、EUの食品安全基準、動植物衛生基準、残留農薬規制、トレーサビリティ要求などを無効化するものではありません。

 そのため、ブラジル側には、「メルコスール協定を結んだのだからEU市場に自由に輸出できる」という認識が一部にある一方で、EU側では、「輸入自由化≠SPS規制の緩和」という立場をとっています。

 つまり、EU側の要求水準は非常に高く、ブラジルの農業・畜産システムとの間に構造的な差があるというのが現実でもあります。

 ブラジルの生産規模とコスト構造は根本的にEUのそれとは異なっており、ブラジル側が欧州モデルに変換するには、生産コストが上昇し、輸出競争力が低下し、中小生産者の淘汰することに繋がるため、国内農業界の強い反発を受けます。

 しかし、EU側にも政治的事情があり、「EU農家だけが厳しい規制を課され、輸入品が安く販売されるのは許せない!」と農民を始めとする国民が強い反発。フランスでは、農民がトラクターで高速道路を封鎖したり、大暴動を起こしたりする騒ぎが数年間にわたり、発生しています。

 結果的に、ブラジルが欧州への輸出をしようとするならば、これらの規制に遵守するしかないか、一部の欧州向けの生産とその他の国内やアジア市場向けの生産を分けるというところで、譲歩することを提案するか?にかかっているような気がします。

 今回のEUの発表は、もちろんメルコスール向けの発表でもあると同時に国内、EU圏内向けの「ちゃんとやってるだろアピール」でもあるのです。


EUブラジル産の食肉輸入禁止


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