フランスの多国籍タイヤ製造企業「ミシュラン」は、トラックとバン用のタイヤ販売の業績不振のため、フランス国内にある2ヶ所の工場での操業を2026年の初めまでに段階的に停止し、閉鎖することを発表しました。
閉鎖される2ヶ所の工場は、ショーレ(メーヌ・エ・ロワール)とヴァンヌ(モルビアン)にある主にドイツ向けのタイヤ拠点で、50年以上、この地域に根付いていた工場の従業員1,254人の雇用が失われることを意味しています。
これに対して、同工場の労働組合は、一斉に決起し、これを残忍かつ一方的な決定であると大反発、この工場の閉鎖が発表されて以来、デモやストライキを継続しています。
このミシュランの工場閉鎖とそれに伴うデモやストライキの報道に、2020年にブリヂストンがやはりフランス国内の工場を閉鎖した際に起こった騒動を思い出しました。
タイヤ製造業界は、アジア製品に押され、業績が低下しており、2020年のブリヂストンのべチューン工場閉鎖の時点で、すでにミシュランは、ブリヂストンに世界シェアトップの座を奪われ、業績不振はブリヂストンよりも先行しており、2,000年初頭以来、フランスにおけるミシュランの工場閉鎖は、5件目、6件目になると言われています。
私は、その時は、ブリヂストンという日本の企業であったために注目し、一企業が工場を閉鎖するのに、フランス政府の大臣クラスの面々までが登場し、これに反発する様子に驚いたのですが、今回も、似たような反発が展開されています。
被雇用者からすれば、死活問題で、「20億ユーロ以上の利益を上げている会社がなぜ?工場を閉鎖するのか?」とか、バルニエ首相などは、これまでミシュランに対して政府が与えてきた公的資金や5,500万ユーロに相当する研究税額控除はどのように利用してきたのか?」などと攻め立てています。
それに加えて、社会党まで出てきて、従業員支持の姿勢を表明し、工場閉鎖の一時停止を要求するという騒ぎになっています。
アジア製品の拡大が叫ばれるなか、その実態は、中国製品といっても、中国製のミシュランのタイヤになっている!これは、不正な資本主義だ!と指摘する人もいます。
しかし、資本主義社会で利益を求める企業にとって利益率を上げることは、当然のこと。構造的な問題があるとされるこれらの工場に対する対応をとっていくのは必然。
考えてみれば、これは、タイヤ業界だけでなく、ついこの間、問題になったラクタリス(乳製品業)のフランス国内での牛乳回収量削減計画やサノフィ(製薬会社)のドリプラン部門の子会社売却など、国内生産部門を撤収していく動きは、似たものを感じます。
ミシュラン側は、今回の2工場閉鎖に関して、「この地域の従業員やその家族に対して、彼らに提供できる支援策を全力で提供していきます」と発表しています。
フランスは、このような工場閉鎖などに伴う解雇の場合、少なくとも、法律で定められた補償金(勤続年齢に応じたもの)を会社側は従業員に対して払わなくてはならず、会社側とて、そうそう簡単な話ではありません。
しかし、業界全体の不振が続くなか、早めに手を打っていかなければ、会社もろとも共倒れになる危険もないわけではありません。
それを逆手にとって、さらにあざといことをして膨れ上がる企業が、結局は生き残っていく社会なのです。
弱い工場労働者たちが路頭に迷うことで、大企業は利益率をあげ、生き残っていく・・これが格差社会の一面で、それがあちこちで起こり続けていることに、呆然とするのです。
ミシュラン2工場閉鎖
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