今回のパリオリンピックは、パリ住民はもちろんのこと、それに関わる人々に大きな負担を強いていますが、特に開会式当日のセーヌ川を舞台にした壮大なパレード計画は、ことのほか、この負担を大きくしているように思います。
このパレードが行われる周辺の通行止めや交通規制は、このセレモニーのために、広大な範囲に及び、パリ市内は、厳戒体制に近い、移動が制限されている状態にあります。
先日、セーヌ川を200隻のボートが行進するリハーサルが行われたようですが、たしかに、これがとどこおりなく成功すれば、素晴らしいものになるに違いないと思いつつ、その1日のために、これだけ不自由な思いをしなければならないのか?とも思ってしまいます。
そもそも、この警備にあたっている警察官や憲兵隊なども、もうずいぶんと早い段階で、オリンピック期間中に働くことを盾に様々な要求をつきつけ、ストライキなどを行った結果、賃上げや特別ボーナスなどを獲得し、関係する公的機関などは、すでにほとんど、この手のストライキを伴う交渉は終了しているものと思っていました。
ところが、ここに来て、舞台芸術家組合(SFA-CGT)は、(オリンピック開会式に出演する予定のダンサーたちのギャラ等の不平等な扱いへの抗議)パリオリンピックの開幕日である7月26日、また8月28日のパラリンピック開会式のリハーサルのためのストライキを通告しています。
オリンピックまで1週間を切った段階でのストライキに、さすがにこのタイミングで要求を突きつければ、通らないわけはないな・・さすがフランス、すごいな・・と思ったのですが、この労働条件のバラつきは、実際に、なかなか深刻な状態であったようです。
舞台芸術家組合がAFP(仏報道機関)に訴えた報告によれば、断続的に募集されていた3,000人のダンサーのうち、250人から300人が無報酬で雇われているほか、その報酬は60ユーロから団体交渉の恩恵を受けた人の1,610ユーロまでとバラつきがあり、強い不平等、差別的扱いについても批判しています。
7月初めに2回の交渉会合が行われたが、目立った進展は得られなかったということで、すでに交渉の機会がもたれていたにもかかわらず、状況は改善されていないという、このままなあなあに進められてしまいかねない、切羽詰まった状態であったことがうかがえます。
これに対し、2024年パリオリンピック組織委員会は、労働条件の問題を非常に真剣に受け止めており、パナメ24(このセレモニーの舞台のサービスプロバイダー)はダンサーの労働協約を尊重しており、報酬は従来の最低額よりも高くなるだろうと断言。
「検証の結果、サービスプロバイダーのパナメ24は、ダンサーという職業に適用される労働協約を適用することで、法律を厳格に遵守していることが確認できました」と主催者の代表者は付け加えていますが、ハタから見ている私でさえ、「それができていないから、抗議しているのでは??」と思ってしまいます。
オリンピック開催にあたっては、巨額の費用が費やされていることは言うまでもありませんが、正直、こんなもの必用、こんなこと必用?ということにも、相当な金額が割かれており、それでも、それで賄えるならばともかく、ダンサーを無報酬で雇う?(無報酬の場合はふつう雇うとは言わない)、末端?の労働者に払うべきものを払わずに費用を削るのは、あり得ない・・もしかして、そのプロバイダー業者の中抜きでは???などと日本のオリンピックの後の騒動を見ていて、想像してしまいます。
どちらにしても、これだけの騒ぎになれば、実際に彼らがストライキを実施してセレモニーに支障をきたすということはないとは思いますが、声をあげなければ、隙あらば、弱者が痛い目に遭う可能性が高いということが表面化した一例ではないか?と思うのです。
オリンピック開会式セレモニーダンサー 当日ストライキ予告
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