2021年1月29日金曜日

フランス人が日本の感染対策に対してびっくりしていること



 最近、クリスマスも年末年始の行事も終わって、少し落ち着いたのか? どういうわけか?しばらく話していなかったフランス人の友人から、電話がかかってきます。思うように出歩けないので、電話ででも誰かと話したいのかもしれません。

 とはいえ、話題は、コロナ関連のことになりがちなのですが、彼らが共通して怒っているのは、ワクチンの予約が全く取れなくなってしまったことです。両親のための予約を入れようとしているのに、全く、予約ができないのだそうです。

 年が明けて、他のヨーロッパ諸国に比べて、大幅にワクチン接種が遅れていることが発覚したフランス政府は、大バッシングを受け、年が明けるとともに、これでもかというくらい、ワクチン接種の話題で持ちきりになり、政府は、今日は、どれだけワクチン接種が進んだかというニュースを大々的に発表し、かなり、ワクチン接種に躍起になってきました。

 ところが、ファイザー等のワクチン製造販売元に問題が起こり、ワクチンが届かずに、供給が間に合わなくなってきてしまったのです。これは、フランスだけで起こっている問題ではありませんが、元々、ワクチン接種に遅れを取っていて、慌てて、ワクチン接種の枠を拡大したフランスには、特に問題が深刻化しているのです。

 そもそも、このワクチンは、2回接種しなければならないもので、すでに、年初に1回ワクチン接種をした人々は、そろそろ2回目の接種をしなければならないのです。ところが、急にワクチンが届かなくなってしまったのですから、1回目の接種を希望する人の予約は受け付けられないのです。

 新たに予約を入れるどころか、これまで予約した人まで実際に、ワクチン接種を受けられずに予約がペンディングになってしまっている混乱状態なのです。

 まあ、知人やその家族がコロナウィルスに感染して、入院している・・などというニュースではなく、ワクチンが受けられないと怒っているのは、まだ幸いなのかもしれません。

 日本の様子は、どうなの?と聞かれて、「日本も感染は、悪化はしているけど、フランスよりも全然、マシだよ・・」と言うと、「じゃあ、レストランやお店もやっているの?」「時間帯に制限はあるらしいけど、やっているみたい・・」と答えると、彼らはとても、ビックリします。

 考えてみれば、日本は、フランスの2倍の人口を抱えているのに、これまでの死者数は5300人、フランスは、75,000人と日本の15倍近い犠牲者を出しています。(人口比率を考えれば、実質30倍と言うことになります)

 2倍3倍ならばまだしも、これだけの差になると、もはや比較の対象にはなりません。まさに別世界です。

 フランスは、2回のロックダウンに加えて、ほぼ、一年のうちのほとんどの期間をレストランなどは閉鎖したまま、その他に夜間の外出禁止などの日本よりもずっと厳しい措置を続けているのに、現在、再び、3回目のロックダウン間近と言われている状態です。

 私は、彼らに日本の状況を説明しながら、現在、感染が悪化してはいるものの、日本は、フランスに比べてこれだけ感染を抑えられているのだから、やっぱり、凄いな・・と改めて思うのでした。

 考えてみれば、私の父が入っていた介護施設に行った時、もう数年前のことで、コロナウィルスなど、まだ影も形もなかった頃でさえ、施設に入る前の手洗いとアルコールジェルを使用して入ってください・・と言う衛生環境への気の配り方にビックリしましたが、それを考えると、日頃からの衛生観念が全然、レベルが違うのです。

 フランスの高齢者施設に行ったことはありませんが、現在、コロナウィルスが蔓延している状況でさえも、フランスの高齢者施設が、あれほど清潔な状態であるのかどうかは、甚だ疑問、現在のような状況でさえ、日本の通常の衛生レベルに達しているかどうかもわかりません。

 そんな衛生観念の違いは、大きく感染状況にも影響しているのでしょう。

 しかし、ワクチン問題で、頭がいっぱいの彼ら・・「日本は、まだワクチン接種を始めてもいないらしいよ・・」と言うと、さらにビックリするのです。「日本のように、何事も早く進んだ国で、なんで???」と・・。

 

<関連>「コロナウィルスワクチンに対する世界と日本の温度差」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_18.html

 

 

 

 








 

2021年1月28日木曜日

なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き

   



 ロックダウンは必須だと言われながら、フランス政府はなかなかその決断を下さないまま、一週間以上が経過しています。感染状況だけでなく、経済的な逼迫状態からも、そのロックダウンの詳細を決めかねているのは、理解できます。

 政府の決断は、僅かな期待を込めて、夜間外出禁止を前倒しして、18時にした成果を見届ける2週間後の今週末まで、決定を引き延ばしていますが、残念ながら、その効果は全く現れておらず、新規感染者数も集中治療室の患者数も増加し続けています。

 もしも、この夜間外出禁止の時間帯を早めなければ、もっと急激に増加していたかもしれないので、それなりの効果はあるとも考えられますが、どちらにせよ、感染が拡大し続けている以上、更なる措置を取らざるを得ないことは誰もがわかっています。

 しかし、国民もロックダウンや多くの制限に縛られる生活に経済的にも精神的にも疲れてきていることもあり、営業停止になっているはずのレストランが痺れを切らして営業を始めたり、先日は、パリでは、いくつかのレストランが実は営業していて、ランチタイムなどは、かなりの人が入っているのに、現地の警察が見て見ぬふりをして、営業が続けられているという話を聞いたばかりです。

 昨日は、ニースにあるレストランが営業禁止を無視して、営業を再開し、テラス席は、50人ほどの客が集まり、20人の警察が踏み込み、営業終了を待って、レストランのオーナーは逮捕、お客さんには、135ユーロの罰金が課されました。

 かれこれ、最初のロックダウンから1年近く経過したフランス国民は、昨年の3月の時点では、93%がロックダウンに賛同していたものの、4月のロックダウン延長時には、83%、2回目のロックダウンの10月末には67%にまで低下し、現時点では、58%まで低下しています。

 10月末の2回目のロックダウンの際には、12月には、なんとかクリスマスを家族で迎えるためにという明確な目標もあり、まだ希望もありましたが、現在は、イギリス変異種の急激な拡大により、周囲のヨーロッパの国々も厳しい感染状況の中、次々にさらに厳しい規制が敷かれている中、終わりの見えない今回のロックダウンには、抵抗があるのは、もっともでもあります。

 しかし、この状況をこのまま放置するわけにもいかず、特に、感染力も高く、致死率も高いイギリス変異種の拡大は、深刻で、2週間前には、感染の1〜2%程度であった変異種が現在では、パリ地域では、14%まで上昇しており、2週間で10倍以上にも膨れ上がったことになります。近いうちにコロナウィルスの主流は、イギリス変異種がとって変わるのではないかとする見方をする専門家もいます。

 これらの状況を鑑みるに、現在3,100人まで膨れ上がっている集中治療室の患者数は、2週間後には、4,000人、さらに2週間後には、5,000人まで増加すると予想されています。

 集中治療室に5,000人というのは、フランスの医療システムの崩壊状態に限りなく近づく数字です。政府は、10,000床まで集中治療室は、拡大できると言っていますが、ベッドだけあっても、それをケアーする人出は足りません。

 政府の決断が遅れれば遅れるほど、感染者は増え続け、国民感情も動揺して、迷いが生じてきます。被害を少しでも少なく留め、できるだけ早く感染を収束させるためには、本当は、もう猶予できない状態なのです。

 昨日は、5月に予定されていたカンヌ映画祭が7月に延期されることが発表されました。先の予定ばかりが先行して延期になったり、中止になったりしているのに、目の前に迫っているロックダウンが決められないことをとても、私はとても、もどかしく思っています。


<関連>「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

 

 

 

2021年1月27日水曜日

夜間外出制限をめぐりオランダで暴動 オランダに比べるとフランス人は意外と従順なのはなぜか?

Des policiers font face à des opposants au couvre-feu à Rotterdam, aux Pays-Bas, le 25 janvier 2021. (KILLIAN LINDENBURG / ANP MAG / AFP)


 ここ数日間、オランダでの夜間外出禁止に反対するデモが暴動化している様子がフランスでも報道されています。

 オランダの首都、アムステルダムと南部アイントホーフェンをはじめとする国内10カ所以上で、コロナウィルス感染対策の夜間外出禁止に反発する無許可デモが行われ、警官隊と衝突し、石やゴルフボール、爆竹などが投げられ、車や商店にまで放火される暴動に発展しました。

 ユルク(中部フレヴォラント州)では、コロナウィルスの検査施設までが放火されています。いくらなんでも検査施設に放火は、悪質です。

 この暴動では250人が逮捕され、過去40年間で最悪の政情不安だと言われています。ルッテ首相は、暴力は、抗議ではなく「犯罪」と述べ、これらの暴力行動に対して厳しく対処することを発表しています。

 オランダでは、昨年10月からレストランやバーが閉店、12月15日からは、学校や生活必需品以外の店舗も閉鎖されています。

 今回は、それらの制限に加えて夜間外出禁止(21時〜4時半)が追加されたことに対する反発です。

 しかし、このオランダの様子を見ていて、オランダに比べれば、フランス人は、意外と従順に、ロックダウンや夜間外出制限に従っているのだな・・と、私は、妙な感心をしてしまいました。

 フランスでも、このコロナ禍に、デモは度々、起こっていますし、ブラックブロックなるデモに便乗して暴れる集団により、デモが暴動化することもありましたが、それは、コロナウィルスの行動制限に対してのものではなく、最近のデモは、もっぱら、今は、グローバルセキュリティ法に関するデモが中心で、コロナ対策に対してのものは、あまり、ありません。

 ましてや、フランスの夜間外出制限は、18時から6時まで、これに違反すれば、135ユーロの罰金が課せられます。(オランダは21時から4時半まで、罰金は、95ユーロ) オランダに比べれば、格段、厳しい制限をフランス人は、概ね受け入れています。

 この18時の門限を守るために、日頃は急がないフランス人が、帰途を急いでいる様子には、ちょっとびっくりするくらいです。

 これは、フランスの感染状況がオランダよりも深刻であることも理由の一つであるかもしれませんが、ロックダウンなど制限に対するの国民の努力ををちょいちょい褒めつつも、ギリギリのところで締めているフランス政府のやり方は、少なくとも大きな反発を生んでいないだけでも上手くいっている方なのかもしれません。

 オランダでの今回の暴動は、オランダ政府の一貫性のないメッセージが国民の信頼を形成できなかったことが、原因になっていると見られています。

 コロナウィルス流行の初期には、「オランダ人は、法を遵守する国民性で、マスク着用や外出禁止といった措置を取らない方針」としていたにもかかわらず、年末年始以来の度重なる制限の追加にこれまでの怒りが爆発したとも言われています。

 このコロナウィルス対策のための数々の行動制限に関して、政府の説得力、国民をどう納得させられるのか?も、大きな問題の一つです。

 とりあえず、物申すフランス人が度重なるロックダウンや、厳しい夜間外出制限をなんとか受け入れているのも、ある程度、フランス政府は国民を納得させることができているのだなと思ったオランダの今回の騒動でした。

 しかし、むしろ、夜間外出制限を、外出さえしなけりゃいいだろ!とばかりに、夜間は、家で人が群れているのも、フランスの現状の一つなのですが・・。


<関連>「コロナウィルスに関するマクロン大統領のテレビ放送を見て思うこと」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_13.html 

 


 


2021年1月26日火曜日

変異種による2回目のパンデミックが起こる

  


 イギリス変異種がヨーロッパで猛威を振るっています。

 イギリスでは、すでに一日1,000人以上の死亡者が出る日が何日も続き、ポルトガルでは、この変異種の影響により、40%以上も感染者が急激に増加し、政府が「限界に近い状況である」と発表する非常事態が起こっています。

 このポルトガルのような状況に陥ってしまうことにフランスは大きな危惧を抱いています。

 フランスでも、現在、新規感染者の7〜9%は、イギリス変異種による感染だと言われています。イギリス変異種は、感染速度も速く、感染率も高く、致死率もこれまでのコロナウィルスよりも30%〜40%高いことが、イギリスのボリス・ジョンソン首相からすでに発表されており、フランスの科学評議会の議長フランソワ・デルフライシー氏は、「イギリス変異種による2回目のパンデミックが起こる」「このままの状況を続ければ、(早急に、さらなる制限を設けなれば)、フランスも3月中旬には、壊滅的な状況に陥る」と警告しています。

 1回目のパンデミックも終わらないうちに2回目のパンデミックが起こるという表現を使うことから、科学技術評議会によって予想されている変異種の拡大と、その猛威への懸念の大きさがわかります。

 つまり、同じ感染者数でも、これまでのコロナウィルスとは、重症化し、死亡する比率が高いわけですから、単にこれまでと同じ推移で感染者数や入院患者数を見ていては甘いということです。

 フランス政府は、現在のところ、ロックダウンが必要であることは充分に認識しつつも、その時期や方法を計りかねています。現在の段階では、3回目のロックダウンとして、

① 店舗の営業は継続、1〜10km以内の外出に制限

② 学校も含めて、ほぼ完全な状態のロックダウン(昨年の3月〜5月のロックダウンと同等程度)

③ 学校は継続、店舗は、生活必需品を扱う店舗のみ営業(昨年11月と同等程度)

の3つの方法が検討されています。

 また、各国が必死に進めているワクチン接種も、HAS(Haute Autorité de Santé)によれば、ワクチンは、イギリス変異種の感染速度に間に合わないであろうと言われています。

 ほとんど待ったなしの現在の状況ながら、フランス政府は、夜間外出禁止前倒し(18時)の効果を今週いっぱい見たタイミングの週末にも今後の対策を決定する模様です。

 いずれにしても、現在以上の制限が敷かれることは、必須で、迫り来るロックダウンのために、準備を始める人も現れ始めています。

 コロナウィルスが出現して、そろそろ一年、感染拡大しては、ロックダウン、解除されれば、しばらくしてまたロックダウン、同じことを繰り返していて、愚かしい気もしますが、それに加えてウィルス事態がパワーアップするのですからたまりません。

 これからの数週間、いや数ヶ月、まだまだ気が抜けない日が続きそうです。


<関連>「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

「フランス全土・夜間外出禁止18時へ 入国制限も強化へ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/18.html

2021年1月25日月曜日

フランスの3回目のロックダウンは、決定的

  


 フランスの3回目のロックダウンは、もはや、するかしないかではなく、いつ、どのようにするかという段階に入っているようです。フランスの感染状況は、急激に拡大してはいませんが、週平均、1日の感染者が2万人前後という高い数字をずっと保ち続けてながら、じわじわと増加しており、集中治療室の患者数もこれにつれて、少しずつ増加し、現在は、2,965人(1月24日現在)とほぼ、3,000人のボーダーラインに限りなく迫りつつあり、これは、前回のロックダウンに踏み切った時と同じレベルにまで達しています。

 しかも、現在、最も懸念されているのは、イギリス変異種を始めとする南アフリカ、ブラジルなどの変異種の拡大で、新規感染者の20%がイギリス変異種による感染が占めているポルトガルのように、感染が急速に拡大してしまうことを恐れています。

 すでに年末年始にかけて感染拡大が深刻になり、新規感染者の増加だけでなく、多くの死者を出し、ロックダウン状況にあるイギリスやドイツなどに比べると、一見、感染の急激な拡大はみられないフランスは、この期に及んで、「フランスは、ヨーロッパの中では、最も感染対策ができている」などと、お得意の自画自賛の姿勢を崩していませんが、その実、ロックダウンの効果が表れ始めているドイツやイギリスに比べると、なかなか微妙な数字を常に保ち続けており、今のフランスの状況は、単にドイツやイギリスに比べて、早い時期に1日6万9千人という驚異的な新規感染者数を叩き出したために、ロックダウンを早い時期に行った結果であり、その後のイギリス変異種の出現から、イギリスからの入国制限を慌てて行ったものの、実際には、この変異種がかなりの割合で蔓延し始めていることは、幼少者の感染拡大などの数字を見ても明らかです。

 これからが怖いところで、この変異種による感染拡大の波を迎えるかもしれないにあたって、フランスはすでに集中治療室が3,000近く埋まっている状態で迎えてしまうことで、ここから、急激に感染拡大した場合は、間違いなく医療崩壊まっしぐらになります。

 あくまでも経済をできるだけ維持し、学校も閉鎖しない状態を保ちたいフランスは、夜間外出禁止を18時に前倒しにした効果を期待していますが、一週間たった現在もその顕著な効果は確認されていません。

 学校に関しても、どちらにしてもフランスの学校は、あと10日ほどで冬のバカンスに突入するために、その学校のバカンスのタイミングに合わせた形でのロックダウンを考えているのではないかと思われます。

 科学評議会の議長が、少なくとも3週間のロックダウンは必須であると発言しているとおり、あらゆる状況(感染状況や変異種拡大の影響等)を考えてもロックダウンは確実ですが、あとは、そのタイミングや方法(地域的なものにするか、制限の範囲、年齢等)を検討している段階です。

 現在すでに長い期間営業停止されているレストランやカフェの営業停止が先んじて少なくとも4月6日までと延長されたり、3月に予定されていたバカロレアのスペシャリテの試験が中止になり、ずっと先の予定がどんどん中止になっていることも、当然の措置であると思いつつ、政府が目先のロックダウンを一日延ばしにしつつも、2月から3月にかけての感染爆発を充分に見据えている不気味な動きであることを感じずにはいられません。

 また、イギリス変異種に関しては有効性は変わらないとされていたワクチンも、南アフリカ変異種に関しては、有効性を40%低下させるという研究結果も発表されており、世界各国が躍起になっているワクチン接種の効果も効果が危うくなり、まさにウィルスの進化と人間の戦いのいたちごっこのようで、このパンデミックがさらに長く続きそうな気配がしています。


<関連>「学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_19.html

「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

2021年1月24日日曜日

パリ15区での14歳の少年への集団襲撃事件 


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 1月15日(金)にパリ15区・ボーグルネルで14歳の少年が12人の集団によって殴る蹴る、終いには、バットやハンマーまで使って長時間にわたっての暴行を受ける、恐ろしい画像がツイッター上で拡散されて大問題になり、同時に彼への支援メッセージが後を絶ちません。

 少年は、複数の友人と共にいましたが、この突然の襲撃に遭遇し、友人とともに逃げる途中で、運悪く転び、彼一人がターゲットにされた模様です。

 彼は、その後、まもなく病院に運ばれ、6時間にわたる手術の後、昏睡状態に陥り、意識不明の重体です。彼は、現在も挿管状態で、頭蓋外傷、脳と頭蓋骨の間の血腫、脳挫傷、腕、指の骨折を負っています。

 パリ検察庁は、「集団による殺人未遂事件」として、捜査を開始していますが、まだ犯人は、特定されていません。

 この事件で私が驚いたのは、この事件のあまりに残酷な暴行の模様はもちろんのことですが、この事件が起こったのが、パリ市内では、特に危険と思われている地域ではなかったことです。

 パリ15区は、観光客には、あまり注目される場所ではありませんが、16区ほど地価が高いわけでもないわりには、比較的安全で、在仏日本人の多い地域でもあるのです。

 パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)などもあり、韓国レストランなどが多い地域でもあります。

 何よりボーグルネルと言えば、パリ最大級のモダンなショッピングモールで有名なところで、とてもそんな残忍な犯罪と結びつくようなイメージではないのです。

 被害者の少年の母親は、沈痛な面持ちで、しかし冷静な態度で、自らマイクを持ち、テレビのインタビューに答え、まるでレポーターのように、淡々と落ち着いて、息子の被害状況を説明し、「彼は、優等生で、敵を作るタイプの人間ではなく、とても誰かから怨みを買うようなことは考えられません。彼は、一週間昏睡状態が続いていましたが、少しだけ回復の兆しが見え始めました。警察も政府も力付けてくれていて、捜査も進行中ですが、犯人は特定されていません。この事件を目撃した方がいたら、情報を警察に連絡してください」と堂々と顔を出して、訴えかけていました。

 思っても見なかった15歳の息子の事件を堂々とテレビの前で冷静に語ることができる母親に感心したとともに、この比較的安全と思われていた地域で、このような恐ろしい事件が起こることに恐怖を感じるのです。

 事件の真相はまだわかっていませんが、これが、特に彼を狙ったものではなく、無差別に行われた暴力であったとしたら、それは余計に恐ろしいことでもあります。

 コロナウィルスによる様々な制限を強いられているストレスの多い生活が続く中、人々の心も荒れて、犯罪も増加しています。ストレスの発散をこのような暴力的な方法で発散させている一部の人間が、コロナ以外の恐怖を煽っています。


<関連>「ノエルに向けて治安の悪化するパリ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_12.html



 







2021年1月23日土曜日

ディエップの病院で260人感染のクラスター発生 ワクチン接種は医療従事者優先にするべき

  


 フランスでは、ディエップ(ノルマンディー地域圏)の病院で、医療従事者141人と患者123人にコロナウィルス感染が拡大するクラスターが発生しています。病院でのクラスター発生は、深刻な事態です。

 ディエップは、イギリス海峡に面した港町で、この港町の病院での急激な勢いでのクラスター発生には、イギリス変異種の影響が強いと見られています。

 この病院では、医療従事者の感染に加えて、コロナウィルスによる入院患者の増加により、緊急ではない手術の30%は、延期せざるを得ない医療逼迫状態に追い込まれています。

 なぜ、ここまで感染が拡大してしまったのか? しかも病院で、医療従事者の間で・・。

 フランスでは、これまでに96万人へのワクチン接種が行われていますが、最優先されているのは、あくまでも高齢者で、医療従事者に対しても50歳以上という制限がつけられています。

 コロナウィルスの治療の第一線で働く、感染リスクが最も高いと思われる医療従事者に対して、ワクチン接種に年齢制限が敷かれていることは、おかしな話です。医療という現場で働く人々は、たとえ感染して重症化する可能性が低かったとしても、感染を拡げてしまう可能性があるのです。

 感染拡大が進んでいる今は特に、彼らこそがワクチン接種を優先されるべきなのです。

 これに関しては、日本は、未だワクチン接種が開始されていない状況ではありますが、政府が示しているコロナウィルスワクチン接種の方針では、医療従事者へのワクチン接種を最優先にしていることは、とても賢明なことだと思っています。

 ましてや、現在、フランスは、ワクチン接種の拡大に懸命になっているものの、ワクチンの供給が間に合っていない状況で、ワクチン接種を急ぐばかりで空回りしている感が否めません。

 現在、ワクチン接種の権利がある75歳以上の一般の高齢者でさえも、予約を取るのも大変で、家から遠い場所に行かなければならなかったり、やっと予約が取れて出向くと、ワクチン切れの状態だったりするアクシデントも起こっています。

 フランスの感染状況は、劇的な感染悪化ではありませんが、徐々に、しかし、確実にじわじわと悪化している微妙で危険な状態が続いています。波が急激に高くならずに徐々に上昇している状況は、知らず知らずのうちにわかりづらい形で自覚しづらい状態で、悪化しているだけに、余計に始末が悪いとも言えます。

 とはいえ、余程のことがない限り、継続すると言っていた学校も、クラスター発生のために閉鎖される学校が増え始め、もはや3回目のロックダウンは避けられない状況であると、誰もが思っています。

 政府は、夜の外出禁止を18時に前倒しした効果が現れることに僅かな期待を抱いているようですが、現実的には、感染悪化の顕著な数字が表れるのを待っているような状態で、同時に、3回目のロックダウンをどのような形にするのか(制限の内容や地域、方法、期間など)を手探りしているようです。

 夜の外出禁止を18時に早めたことで、スーパーマーケットなどの店舗は、朝7時半からの時間前倒しの営業に切り替えたり、日曜日も営業するなどのフランスとしては、異例の対応を取り始め、必死にこの制限に対応していますが、そこまでしても感染の威力は、一向に抑えることができないことは、歯痒いばかりです。

 ワクチン接種が現在、多くの国ではリスクの高い(致死率の高い)高齢者を中心に必死で行われているのが、果たして正しかったのかどうか? と、私は思い始めています。

 感染の抑制をワクチンに頼るならば、医療従事者はもちろんのこと、仕事に出なければならない人々、感染を拡げる可能性の高い人々こそがワクチンを接種しなければならないのではないだろうか?と、チラと頭をかすめたりしているのです。

 しかし、現在のところ、ワクチンの効用性もどの程度なのかは、まだわかりません。即効性があるのかどうかもわからないし、かなりの割合でワクチン接種が進んでいるイスラエルでさえも感染の拡大は止まっていません。

 フランスの専門家は、このままの状態を続ければ、3月には、フランスは、再び、昨年同様、あるいは、昨年以上の壊滅的な状況が怒ると警告を発しています。

 人々が感染回避の努力をすれば、その形を変化させながら、威力を発揮し続けるコロナウィルスにどうしたら、人間は打ち勝つことができるのか?

 3度目のロックダウンで3度目の正直・・感染を止めることができるのか? オリヴィエ・ヴェラン保健相は、今年の8月末までにフランス人全体のワクチン接種を終える予定であることを発表しています。

 あくまでも予定ですが・・。


<関連>「ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_6.html

「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_12.html