フランス政府のロックダウン解除モードには、国民が戸惑うほどに、アクセルがかかっている感があります。もともと、ロックダウンの解除は、地域ごとに段階的に行うはずだったのが、まさかのレッドゾーンまで含めた全面解除。
しかし、ロックダウン解除の際は、レッドゾーンには、いくつかの条件がつけられ、レストラン、劇場、映画館、ホテル等の営業は、解禁されず、それ以上の解禁は、6月2日の段階で、感染状況を検討しつつ、追って発表するとしていたはずが、まだ、ロックダウン解除から一週間もたたないうちに、ここ数日、堰を切ったように新たな解禁が発表されています。
一昨日は、ビーチの解禁が始まったと思ったら、昨日は、7〜8月のバカンス予約(フランス国内のみ・・とはいえ、フランスは、海外にも領土があり、それも含まれています)が解禁され、国民に向けて「7〜8月には、バカンスに行ける!」と発表したのです。
バカンスのために生きていると言っても過言ではないフランス人にとって、これは、朗報には違いありませんが、感染の不安の残るこの状況でのバカンス解禁に国民は、どう反応するのでしょうか?
今年の4月に旅行代理店Locatourが実施した調査によると、ロックダウンが解除されたら、フランス人の21%がバカンスに出ると答えており、ほぼ半数が30日以内にバカンスの予約をする予定と発表しています。
今回のバカンス解禁の際には、「Plan Marshall(マーシャルプラン)」が同時に発表され、これにより、コロナウィルスの影響を大きく受けた観光業部門に180億ユーロが充てられることになりました。この連帯基金は、ホテル、レストラン、観光業の補填に年末まで続けて援助が行われ、ローンのメカニズムも強化されます。
同時に、グリーンゾーンに関しては、カフェ、レストランが6月2日に再開されることになりました。
これだけ、バカンスの解禁、観光業の援助に政府が力を入れるのも、単にフランス人がバカンス好きだからだけではありません。フランスは、世界でも有数の観光大国で、観光旅行者数が世界一多い国であり、観光収入は、国の収入の10%以上を占めています。
それだけの観光収入があるということは、レストラン、ホテルなども含めて、それだけ観光業に携わる人が膨大な数に上るということです。
現在の状況では、海外からの観光客を望むことはできませんが、観光業を再開することは、国の経済を大きく動かすことでもあるのです。
とはいえ、こう毎日のように、たたみかけるように、解除モード満開で煽られれば、ただでさえ、2ヶ月間の監禁生活でストレス満載の国民が浮き足立つのは、目に見えています。
現在、ICUの重症患者が減少傾向にあるのは、ロックダウンの成果であり、ロックダウン解除の結果が出るのは、少なくとも2週間後です。これが杞憂に終われば良いのですが、治療薬もワクチンもない今の段階では、不安は、拭えません。
それにしても、ここのところ、学校の視察の様子の報道や戦勝記念日のセレモニーなどには、現れたものの、ロックダウンの解除の発表には、マクロン大統領が出てこなかったことを私は、少し疑問に感じています。
ロックダウンの宣言は、国民に向けて、直接、大統領が発表したのに、なぜ、ロックダウン解除の発表は、彼が行わなかったのか? 日を追う毎の、リスクの高い、かなり大胆な急激な政府の決断に、マクロン大統領が表に出てこないことを、私は、訝しく、不可解に感じているのです。